今週末の9月12日(日)、第9回FIFAフットサルワールドカップが開幕する。小さなコート内に芸術的なテクニックと強靭なフィジカル、そして細やかな戦術が凝縮される世界最高峰の熱戦に注目だ。
当初、大会は昨年9月に開催予定だった。しかしコロナ禍の影響で1年延期となり、ようやく開幕を迎えることになる。舞台はバルト三国の美しい街並みで有名なリトアニア。FIFAの国際大会がリトアニアで開かれるのはこれが初めてだし、彼らは決してフットサルの強豪国ではない。「そんな国でのW杯で大丈夫?」と思われるかもしれないが、心配無用だ。設備面に関しては申し分ない。
大型アリーナが試合会場に
ご存知の方も多いと思うが、リトアニアはバスケットボールが非常に盛んな国だ。バスケットは彼らの国技であり、過去に何名ものNBAプレーヤーを輩出している。一番有名なところでは、1990年代にNBAのポートランド・トレイルブレイザーズで活躍した身長221cmのアルビダス・サボニスだろう。
サボニスはNBAで活躍した以外にも、ソビエト代表時代に1988年のソウルオリンピックで金メダルを手にすると、リトアニア独立後にはリトアニア代表として1992年バルセロナ五輪と1996年アトランタ五輪で2大会連続の銅メダルを獲得した。リトアニアの年間最優秀スポーツ選手に4回も選ばれるなど、まさに国民的な英雄だった。息子のドマンタス・サボニスも現役NBAプレーヤーとして活躍しているので、知っている方も多いはずだ。
東京五輪に関しては、今年の予選でルカ・ドンチッチ擁するスロベニアに敗れて出場はならなかったが、それでもリトアニアはバスケ大国と呼ぶにふさわしい国なのだ。
少し話が逸れたが、今回のフットサルW杯では、そんなリトアニアのバスケットボールチームの本拠地が試合会場として使用される。首都ビリニュス、第二の都市カウナス、そしてクライペダの3都市の会場が使われ、10月3日の決勝戦も開かれるメイン会場の「カウナス・アリーナ」は1万4000人収容の大型アリーナなのだ。
残りの2会場も2011年バスケットボール欧州選手権で使用されたアリーナのため、設備面は問題ないと言えるだろう。だから、たとえフットサルW杯出場経験のないリトアニアがホスト国でも、大会は必ず盛り上がるはずだ。
当然、コロナ禍の影響はある。しかし今大会は「ワクチン接種」「コロナに罹患して回復」「PCR検査の陰性」のいずれかの証明書があれば観客も入場できるという。マスクの着用に関しては「推奨」となっている程度なので、会場がどんな盛り上がり方を見せるのか、今から楽しみだ。
日本代表は初戦が大一番に
もちろん、今大会には日本代表も出場する。前回の2016年大会は、アジア予選の準々決勝でベトナムにPK戦で敗れて出場を逃していたが、今大会はコロナ禍の影響でW杯予選を兼ねているAFCフットサル選手権が中止となり、過去の実績によりAFCの推薦によって出場権を得た。2大会ぶり、9年分の想いを背負ってリトアニアのコートに立つわけだ。
グループステージは、世界ランク1位のスペイン、南米の強豪国パラグアイ、そして初出場で未知数のアフリカのアンゴラと同組だ。そのため、9月14日に行われるアンゴラとの第1戦が運命の大一番となるわけだ。グループステージは各組上位2チームに加えて3位の上位4チーム(6グループ中)も突破できるので、アンゴラ戦に勝てればベスト16進出が見えてくる。
過去最高成績は前回出場した2012年大会の16強だが、どこまで勝ち上がれるのか楽しみだ。先日、ビーチサッカーの日本代表がワールドカップで準優勝という新たな歴史を築いたように、フットサル代表も日本のファンを必ず興奮させてくれるだろう!
Photos: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。