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「ダウン」が取れなくなった川崎フロンターレ。失速の様相を解明する

2021.09.17

J1前半戦は独走状態を築き上げリーグをリードしてきた川崎フロンターレだったが、東京五輪期間の中断を境に失速。リーグ戦ではアビスパ福岡戦での初黒星を含め2勝2分1敗と勝ち点を落とす試合が増えて2位の横浜F・マリノスに勝ち点1差(川崎は1試合未消化)まで詰め寄られ、ルヴァンカップとACLで敗退を喫した。この夏の移籍市場で五輪にも出場した田中碧、三笘薫の主力2人を失ったチームに今、どのような変化が起きているのか。その現状を山口遼さんが 、書籍『シン・フォーメーション論』の中で提案したフレームワークも用いて分析した。

 川崎フロンターレの失速はもうどうやら間違いない。

 シーズン序盤には圧倒的な成績を残し、2位以下に大差をつけての優勝も予想された川崎だが、ここにきてその勢いは途絶えつつある。要因は明確だ。夏のマーケットで田中碧と三笘薫という、ここまでチームの躍進を牽引してきた2人が海外から引き抜かれた。そもそも引き抜かれるのが遅過ぎるというくらいにパフォーマンスが傑出していた2人を、夏場の暑さに超過密日程が重なるこのタイミングで同時に引き抜かれればチームがダメージを負わない方がおかしな話だ。

 ただ、冷静になって考えてみれば「たった2人」いなくなっただけという見方もできる。実際に2人がそろって欠場する試合や時間帯はこれまでにもいくらでもあった。にもかかわらずこれほどまでに潮目が変わってしまうという事実に関しては、検証の余地がある。「中心選手の2人がいなくなった」という単純な変化ではなく、2人がいなくなって生まれた小さな変化が次第に大きな問題点として徐々に現れてきているのだ。これはまさに、サッカーが様々な相互作用が絡み合って機能する複雑系であることを示唆する。

 このようなことを踏まえ、本記事では田中と三笘の喪失が川崎のパフォーマンスにどのような影響を与えたのかについて考えてみる。まずは川崎がそもそもどのようにパフォーマンスダウンしたのかについて、データも参照しつつ検証する。その上で、彼らがいなくなったことがどのようにそれらのパフォーマンス低下に寄与しているのかについて見ていくこととする。

前半のうちに「ダウン」を奪う“先行逃げ切り”のゲームプラン

 ここ最近の試合で、露骨に勝ち点を落とし始めている川崎。これだけ結果に違いが出るからには、何かこれまでの勝利に大きく寄与していた「根幹的な差別優位性」が失われたと考えるのが妥当だろう。そこでまずは、これまでの川崎の強さを支えていたのは何なのかを考える必要がある。……

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J1リーグ川崎フロンターレ

Profile

山口 遼

1995年11月23日、茨城県つくば市出身。東京大学工学部化学システム工学科中退。鹿島アントラーズつくばJY、鹿島アントラーズユースを経て、東京大学ア式蹴球部へ。2020年シーズンから同部監督および東京ユナイテッドFCコーチを兼任。2022年シーズンはY.S.C.C.セカンド監督、2023年シーズンからはエリース東京FC監督を務める。twitter: @ryo14afd

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