フットボリスタ第86号『カルチョに魅せられて』特別編
発売中の『フットボリスタ第86号』では、EURO2020で久々にメジャータイトルを獲得し見事復権を遂げたイタリアサッカーについて特集。その中で、イタリアサッカー好きの方々にそれぞれの思いを披露してもらうワンコーナー「カルチョに魅せられて」を掲載した。今回はその特別編。普段は東欧諸国の専門家として執筆していただいている篠崎直也さんが実は1990年代に熱烈なサンプドリアファンだったとのことで、EUROを制覇した現イタリア代表チームとも所縁のある当時のサンプドリアの想い出を綴ってもらった。
EURO2020はイタリアの優勝で幕を閉じたが、今大会は30代後半以上のサンプドリアファンにとって特別な感慨があったに違いない。現役時代に2トップを組んでいたロベルト・マンチーニ監督とチームコーディネーターのジャンルカ・ビアッリ、コーチのアッティリオ・ロンバルド、アルベリコ・エバーニ、ファウスト・サルサーノ、ジウリオ・ヌチアーリ――裏側からチームを支えたスタッフの多くは、1980年代後半から1990年代前半にかけて多くのタイトルを獲得した「サンプ・ドーロ」 (黄金のサンプ)のメンバーだったからだ。
筆者もまた、今でこそロシアや旧ソ連諸国の文化やサッカーを研究しているが、10代から20代初めにかけてはサンプドリアを生きがいとした熱心なファンだった。ディエゴ・マラドーナのナポリ加入、アリーゴ・サッキ監督がオランダトリオを擁して強さを見せつけたACミランのトヨタカップ2連覇、1990年のイタリアW杯開催があって、当時はセリエAが世界最高峰であり、海外サッカーと言えばセリエA。1991年に『WOWOW』がセリエA中継を開始、Jリーグ開幕前後に『ワールドサッカーダイジェスト』『ワールドサッカーマガジン』『ワールドサッカーグラフィック』といった海外サッカー専門誌の創刊が相次ぎ、1994年に三浦知良がジェノアに移籍したことにより日本でも一気にセリエA人気が高まった時代である。
今では考えられない“読者欄”での交流
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Profile
篠崎 直也
1976年、新潟県生まれ。大阪大学大学院でロシア芸術論を専攻し、現在は大阪大学、同志社大学で教鞭を執る。4年過ごした第2の故郷サンクトペテルブルクでゼニトの優勝を目にし辺境のサッカーの虜に。以後ロシア、ウクライナを中心に執筆・翻訳を手がけている。