2021年大会のコパ・リベルタドーレス4強に、アルゼンチン勢の姿はなかった。3チームが進出したブラジルとは対照的な、11年ぶりとなる準決勝前の早期全滅に、国内ではクラブチームのレベル低下を懸念する声が高まっているという。7月には28年ぶりのコパ・アメリカ優勝に沸いたアルゼンチンで今、何が起こっているのか。この国が抱える深刻な経済問題、それに伴うサッカー界の窮状を、現地からChizuru de Garciaさんが伝える。
「ブラジルは比較にならない(ほど優勢)」
アルゼンチンで30年以上暮らしてきた外国人としていつも感じることがある。この国の人たちは、ドラマチックに自虐、自嘲するのが巧いというインプレッションだ。
外(国外)から責められ、咎められることを毛嫌いする一方、中(国内)では自国の失態を容赦なく酷評し、「俺たちはどうしてこうなんだ」とため息をつきながら、そんな状況に置かれた自分がまるで悲喜劇の主人公であるかのように叙情的に、情熱的に、時にはシニカルなジョークを交えて嘆く。こういった彼らの特性はいわゆる「argentinidad」(アルヘンティニダー=アルゼンチン性)の一つであり、哀愁漂うアルゼンチン・タンゴが生まれた背景にも関連しているに違いないと思っている。
つい最近も、そんな彼らの嘆きをたっぷり聞かされた。8月中旬のコパ・リベルタドーレス準々決勝で、アルゼンチン勢として唯一勝ち残っていたリーベルプレートがブラジルのアトレチコ・ミネイロに完敗(2戦合計0-4)して敗退した時だ。……
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。