「ハーフスペース」をはじめとした戦術用語の詳細な解説やチーム戦術の分析を行い、寄稿者の中からレネ・マリッチらプロのコーチに転身する人材も輩出しているドイツの戦術分析サイト『シュピールフェアラーゲルンク』。サッカー関係者からも一目置かれる存在の同サイトがこの春、2020-21に破竹の勢いで勝利を重ねたグアルディオラの最新戦術について徹底分析した記事を公開した。分析には、ハイデュク・スプリトのセカンドチームでコーチを務めたマルティン・ラッフェルトら複数のライターが参加。さらに、レネ・マリッチもフィードバックやアドバイスを行っている。今回は 『シュピールフェアラーゲルンク』 の許可を得て、珠玉の分析記事を全編翻訳し公開する。
第5回では、対戦する相手のグアルディオラ対策に着目。ゾーンとマンツーマン、4バックと3バック(5バック)などそれぞれのアプローチや布陣を採用した際に何が起こるかを具体的に掘り下げながら、有効な対抗策があるのかを考察していく。
最先端の守備によって、ペップを苦しめることはできるだろうか?
そもそも、この記事のベースとなる最初の条件は、グアルディオラが伝統的な守備組織を崩し切った(解決した)ことを前提としている。ここで、あり得る反論に対して目を通しておこう。将来、最終的にグアルディオラのチームが主力選手を数人失ってしまい、複数の大会から早期敗退してしまうこともあるだろう(このようなことが起こる場合はプレースタイルの変更やプランの実行の部分でうまくいかなかったか、あるいは対戦相手が素晴らしいパフォーマンスをしたといった理由が考えられるが)。
対戦相手が、個のクオリティで劣りながらも素晴らしいチームワークを発揮して偉大なチームに勝つこともあり得る。そのチームが特化している強みと、マンチェスター・シティのやり方が噛み合ってしまった場合だ。こうなると、相手が強みを出せないように苦しめるのではなく、相手の強みと対峙してしまうことになる。
現時点での優位性を担保している比較的読み取りにくいアイディア(非対称な配置、新しいコンセプトや極端なまでに優れた実行力)の他に、しっかりと整理されたポジショナルプレーとセットプレーが、グアルディオラが未来に進むべき道の1つになるかもしれない。
一方で疑問が残るのは、これまで慣れ親しんだ典型的な型を維持することは、他のやり方に挑戦するよりも意味があるのか、あるいはその別のやり方がマンチェスター・シティに適応を強要することができるのかという点である。
守備側のアプローチ
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Profile
シュピールフェアラーゲルンク
2011年のWEBサイト立ち上げ以来、戦術的、統計的、そしてトレーニング理論の観点からサッカーを解析。欧州中から新世代の論者たちが集い、プロ指導者も舌を巻く先鋭的な考察を発表している。こうしたプロジェクトはドイツ語圏では初の試みで、13年には英語版『Spielverlagerung.com』も開始。監督やスカウトなど現場の専門家からメディア関係者まで、その分析は品質が保証されたソースとして認知されている。