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ピッチ内外で“遊ぶ”ロナウジーニョ。現代には存在し得ない、唯一無二のフットボーラー

2021.07.15

この記事は『プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド』の提供でお届けします。

ピッチの外でも中でも自由奔放で、守備への貢献はほぼゼロ。それでも、ひとたびボールを持てば人々の想像を超えたプレーでそこにあるはずのないゴールへのルートを描き出し、強烈な印象を残したピッチ上の魔術師ロナウジーニョ――選手がどんどんアスリート化していく現代サッカーではもうお目にかかることはないであろう、クラシカルなファンタジスタを回顧する。

笑う門には福来る

 とにかくよく笑っていた。シュートを決めて笑顔は普通だが、この人はシュートを撃つ前から笑っていたりする。「ウフ」と頬が緩んだだけで満面笑顔になってしまうようで、本人はちょっと微笑んでいるつもりなのだろうがバレバレだった。

 ロナウジーニョの「顔芸」が顕著だったのがトレードマークのノールックパスだ。実際に蹴る方向とは反対側に顔を向けるのだが、ものすごく大げさなのだ。「わっ!」と誰かを驚かすような顔を反対側へ向ける。そこには味方が誰もいないこともあったし、そんなに顔でフェイントしなくてもよさそうなもので、しかもやはり時どき笑顔だった。笑顔を勢い良くどこかへ向けて飛ばしていた。

クラブ公式Twitterに投稿されたノールックパスの動画

 あんなに楽しそうにプレーして、実際あんなに笑っている選手は見たことがない。

 サッカーをするのが、いやボールと戯れるのが、楽しくて仕方がないのだろう。試合前にチームメイトがウォーミングアップを開始すると、ロナウジーニョは仲間たちから外れていた。そして用具係がひょいとボールを渡す。ボールを使ってストレッチをする。ボールがないと体操ができないようだった。

トレーニング中、リフティングに興じるロナウジーニョ

 いつも楽しそうだからと周囲もつられて楽しくなってくる。バルセロナにはその時代のスーパースターたちがプレーしてきたが、ロナウジーニョが特別なのはその笑顔ゆえだ。

 今でこそそんな感じはしなくなったが、バルセロナはずっと悲壮感の漂うクラブだった。スペインは国を割る内戦の結果、首都マドリッドを中心とした独裁政権の時期が長く続いていた。カタルーニャは支配下となり独立は悲願になった。「ただのクラブではない」という自負はバルセロナのモットーにもなっている。

 レアル・マドリーへの対抗意識は単なるビッグクラブの意地の張り合いではなかった。1950年代にはレアルと覇を競ったバルサだったが、1960年代にはめっきり勝てなくなり、1973-74シーズンにリーグ優勝した時の立役者ヨハン・クライフは「エル・サルバドール」(救世主)と呼ばれている。いつしかレアルへの対抗意識は歪み、バルサが負けているのにレアルが負けるとファンは快哉を叫ぶようなありさまだった。それが是正されたのはクライフが監督として戻ってきて「ドリームチーム」を作り、リーグ4連覇を成し遂げた時期である。

 常にレアルを気にするのではなく、バルサを主語に考えられるようになった。ただ、それも長くは続かず、レアルの「銀河系」と呼ばれる華々しさに圧倒されていた時期にロナウジーニョは来ている。本当はデイビッド・ベッカムのはずだった。ベッカム獲得競争でレアルに敗れ、パリ・サンジェルマンのブラジル人を獲得していた。

 だが、結果的にロナウジーニョ獲得は大成功だった。

 自信満々、すべてを笑い飛ばすような奇想天外なプレーの数々にファンは「レアル」を忘れて熱狂する。サッカーは楽しい、プレーするのがうれしい。全身で表現しているロナウジーニョは輝く太陽となって、覆っていた湿気を吹き飛ばしていった。

ベッカムやロナウドらビッグネームをそろえたレアル・マドリーに敵地で0-3と快勝した2005年のクラシコのフルマッチ動画。ロナウジーニョはこの試合2ゴールをマーク、レアル・マドリーのファンから拍手が送られるほど圧巻のパフォーマンスを披露した

踊るように歌うように

 得意のエラシコは最初のアウトサイドのタッチでボールが空中に浮く。背中でパスを送り、ワンステップで矢のようなサイドチェンジを蹴る。ブラジルでシャペウ(帽子)と呼ばれる浮き球でかわし、意表を突くループシュートを放つ。ヒラメキにあふれたテクニックは曲芸を見るようだった。

 空前絶後のテクニシャンという印象が強いが、体も大きくサイズ的には「フェノメノ」と呼ばれたロナウドとほとんど変わらない。チェルシーのジョン・テリーが当たりにきたのを逆に吹っ飛ばしたりしている。

 チェルシー戦と言えば、リカルド・カルバーリョを軽快なステップで硬直させ、トゥキックで決めたゴールは語り草だ。他にも数々のファンタスティックなゴールを決めている。

バルサでのゴール集動画。話題に挙がったチェルシー戦のゴールは4:52~

 独特の身のこなし、リズム、圧倒的なスピード、超絶技巧を兼ね備えた怪物だが、誰にも真似ができないのはその発想だろう。

 ロナウジーニョのプレーは「遊び心」にあふれていた。というより、実際に遊んでいた。遊んでいるからアイディアも出る、遊びだから笑っている。なぜかFKだけは頭から湯気が出そうなぐらい極度に集中していたが、基本的には遊んでいた。フィールドの中だけでなく、パリでもバルセロナでもロナウジーニョの夜遊びは有名で、それはしばしば問題になっていたが、たぶんもうそれは仕方がないのだ。サッカー選手が遊んでいるのではなく、遊び人がサッカーをやっていると考えた方がいいのだと思う。

 ジーコは「ブラジルでは珍しくないタイプ」と評していた。何ものにも縛られない自由自在、天衣無縫。享楽的なスタイル。ただ、ブラジルでなくても昔のサッカー選手は現在よりはるかに自由だったし、夜遊びをしたり大酒を飲んだりもわりと普通だった。その点では古いタイプの選手だったと言えるかもしれない。気難しい顔で「仕事」としてプレーし、時には暴力や差別さえ受けながらも勝つことだけに邁進する「現代的」なサッカー選手でなかったのは確かである。

 ロナウジーニョはみなにやさしく、いつも陽気で、落ち込んでいる仲間を気づかっていた。人生を楽しみ尽くすエネルギーと笑顔で周囲を明るく照らす太陽で、殺伐としたフィールドに現れた羽の生えた天使みたいだった。

チームの中心には笑顔のロナウジーニョがいた

スーパースターの賞味期限

 ロナウジーニョのポジションは主に左ウイングかCFだったが、どちらにしても攻撃する場所が少し違うというぐらいである。逆に言うと、守備のタスクを持っていなかった。

 そのため守備ではロナウジーニョのポジションがしばしば穴になった。ただ、それを差し引いても余りある攻撃面での活躍があったので不問に付されていたわけだ。しかし、それは徐々に顕在化していく。

もちろんこうした問題はスーパースターにはつきもので、リオネル・メッシやクリスティアーノ・ロナウドにもそれはある。絶大なメリットに隠されているけれども、彼らがいることでのチームにとってのデメリットは必ずあるのだ。問題が問題として認識されるのは、スーパースターたちがピークを越えて下り坂にさしかかったタイミングである。

 ロナウジーニョの場合、それが意外に早かった。バルセロナに来て5年目には明らかに体重オーバー、負傷の影響もあったが節制不足と言わざるを得ない。そうかと言って根っからの遊び人の生活を今さらどうこうできるわけでもない。次代のスーパースターであるメッシもすでにトップチームでプレーしていた。バルサはクラブの大恩人であるロナウジーニョを体良くミランに移籍させている。

 バルサには常に時代のスターがいたが、バルサで選手生命をまっとうできた人はほとんどいない。ロナウジーニョには「永久契約すべきだ」という声もあったが、5年目にはそれも忘れられていた。ラディスラオ・クバラ、ヨハン・クライフ、ディエゴ・マラドーナ、ロマーリオ、リバウド……ロナウジーニョも例外ではなかったわけだ。

 ロナウジーニョが去った後、ジョセップ・グアルディオラ監督の下で新しいサイクルが始まっている。それはクラブ史上で最も輝かしい時代で、ロナウジーニョを懐かしむこともなかった。ただ、ロナウジーニョの笑顔と数々の鮮やかなプレーがバルサを変えたのは間違いなく、それは誰にも真似のできない偉業である。

全盛期こそ短かったものの、エネルギッシュでプレーする楽しさを全身で表現したパフォーマンスが多くのサッカーファンを魅了し、人々の記憶とサッカー史に刻まれているのは間違いない

◯ ◯ ◯

どんな体勢でもボールを意のままに操る規格外のテクニックと、あふれんばかりのイマジネーションから繰り出す予測不可能なプレーの数々でファンを虜にしたロナウジーニョをはじめ、所属したのは1シーズンながら切れ味鋭い突破でサイドを支配したガイスカ・メンディエタ、さらには今現在チームを牽引しているリオネル・メッシらスター選手たちまで、バルセロナ新旧の名手たちが大人気スポーツ育成シミュレーションゲーム「プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド」(サカつくRTW)に登場!

彼ら豪華選手が手に入る“Q anniversary サマースーパースターカーニバル”の他にも、最大3600GB(無償)や「★5確定スカウトチケット」が獲得できる“Q anniversary アップデート記念ログインボーナス”、ミッションクリアで★5選手などが獲得できる“Q anniversaryサマーニュースターカーニバル パネルミッション”、★5監督が報酬でもらえる“クラブチャンピオンシップトーナメント”など、特典が盛りだくさんとなっている。

すでにプレー中の方はもちろん、「サカつく」未経験の方もこの機会にぜひ、ゲームにトライしてみてほしい。

<商品情報>

商品名 :プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド
ジャンル:スポーツ育成シミュレーションゲーム
配信機種:iOS / Android
価 格 :基本無料(一部アイテム課金あり)
メーカー:セガゲームス

さらに詳しい情報を知りたい方は公式HPへアクセス!
http://sakatsuku-rtw.sega.com/

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Photos: Getty Images

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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