EURO2020に参戦中のイタリアで、最も注目を集めている選手の1人がMFマッテオ・ペッシーナだ。
先発出場したウェールズ戦で決勝ゴールを決めると、途中出場した6月26日のオーストリア戦でも大活躍。苦戦の中で途中出場して試合の流れを変え、延長戦へと持ち込むと、1点リードで迎えた105分に2試合連続となるゴールを決め、イタリアに8強進出をもたらした。
27人目からの捲土重来
元々は26名のリストに名前がなかった予備メンバー。大会では紹介映像の差し替えが間に合わず、ウェンブリーの大型スクリーンにはゴール後に27番の番号をつけた姿が映し出された。
「僕は27番目のメンバーから出発した。ただ、それ以上のことは考えなかった」。ペッシーナは6月28日の記者会見で、メンバーに残った時の背景事情と心境を説明した。
「グループの一員だと僕は思っていたし、合宿の最初にロベルト・マンチーニ監督から『どうか残って、ことの成り行きを見てほしい』と頼まれていた。それからステファーノ・センシのケガでメンバーに入ったけど、僕自身は最初の招集の頃からこのグループの一員としての自覚を感じていた。これがこのグループの素晴らしいところで、マンチーニ監督は選手がみんな重要だと感じさせてくれる」
所属するアタランタでは公式戦40試合に出場。前線と中盤を的確に繋ぐプレーが評価されて出場機会を得ると、アレハンドロ・ゴメスが離脱しヨシップ・イリチッチが不調に陥った2シャドーのポジションで主力となって活躍した。モンツァからミランの下部組織に引き抜かれた後は苦労し、セリエCでプレーをしていた頃にはサッカーを辞めようとも思い悩んだ24歳は、大舞台で結果を残した。
市場価値は2000万ユーロ
ところで、このペッシーナについて、実はアタランタとかつてのパスの保有者であるミランとの間に協約が存在するという。2017年、ミランは当時アタランタに所属していたアンドレア・コンティの獲得にあたって、2400万ユーロの移籍金にペッシーナの保有権を付帯した。
『トゥットメルカートウェブ』等のメディアによれば、ミランはアタランタがペッシーナを再売却した際は50%の移籍金を受け取る協約になっているという。つまり、ミランは半額でペッシーナを買い戻せることを意味するが、その権利はアタランタで100試合に出場すれば消滅する。
現在ペッシーナの市場価値は2000万ユーロまで上がっており、今回のEUROでの活躍によって価格はさらに上昇すると見られている。
もっとも、ペッシーナ自身はアタランタと2025年まで契約を結んでおり、来季も残留が濃厚。「今季の3位からさらに高い順位を目指したい。僕のチームはあまり話題にならないけど、国際的にも顕著な成績を残している。展開が速く創造性があるという点で、イタリアとアタランタは似ているよ」と来季の躍進を誓った。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。