プレミアリーグは長いシーズンが終了。マンチェスター・シティが頂点に立ち、UEFAチャンピオンズリーグ出場権の行方も決まった。
トッテナムのFWハリー・ケインが得点王とアシスト王の2冠に輝き、マンチェスターCのGKエデルソンが2年連続でゴールデングラブ賞を獲得するなど様々な賞が発表される中、スポーツ情報サイト『The Athletic』が違った視点から「もう1つのプレミアリーグ・アウォード」という特集を組んでいるので紹介しよう。
期待以上だったブライトン
優勝はシティだが、実際に「スタッツで見たベストチーム」はどこなのか。攻撃の指標になる「xG(ゴール期待値)」と守備の指標になる「被xG(被ゴール期待値)」の差こそ、単純だがチームの本来の実力と呼ぶことができる。
「xG」-「被xG」の数式で見ると、やはり最高成績を残したのはシティだった。「スタッツで見たベストチーム」もやはりシティだったわけだが、記事の中で賛辞が送られているチームがもう1つある。それがブライトンだ。
今季16位に終わったブライトンだが、ゴール期待値の得失点差を見ると4位の成績だったという。彼らは「被xG」がシティ、チェルシーに次いで3番目に少なかったのだ。さすが分析ファンから愛されるグレアム・ポッター監督が率いるチームだけはある。彼がトッテナムの新監督候補に挙げられるのも当然のことか。
「出場時間に応じた得点王」は誰か。今季はハリー・ケインが23得点で自身3度目の得点王に輝いたが、「90分ごとのPK以外のゴール数」を見ると、1位に輝くのはケインではなく、彼の同僚ギャレス・ベイルだという(900分以上に出場した選手に限る)。
ベイルはシーズン後半にゴールを量産したレスターのFWケレチ・イヘアナチョ(0.74ゴール)を抑えて堂々の1位となった。出場923分間で11ゴールを決めており、90分ごとにPKを除いて「1.07ゴール」。言い換えると84分に1ゴールを決めた計算になる。
記事によると、プレミアリーグの歴史においてシーズン10点以上決めた選手の中で、これよりも1ゴールにかかる時間が少なかった選手は1998-99シーズンのマンチェスター・ユナイテッドのオーレ・グンナー・スールシャール(71分毎に1点)だけだという。
「期待外れ」だったバーディ
PKを除いて「最もゴール期待値を上回った選手」も、やはりスパーズのアタッカーだった。韓国代表FWソン・フンミンである。同ストライカーは今季プレミアリーグで17ゴール。PKを除くと16ゴールなのだが、彼のゴール期待値は8.9ゴールのため、「7.1ゴール」も期待値を上回ったことになる。これはダントツの1位で、期待値を5ゴール以上も上回った選手は他にいないのだ。
一方で「最もゴール期待値を下回った選手」は意外な選手だった。逸機が多かったチェルシーのFWティモ・ベルナーを抑え、最も期待値を下回ったのはレスターのジェイミー・バーディだ。今季バーディは15ゴールも決めているが、PKを除けば7点だけ。彼のPK以外の期待値は12.8ゴールのため、「5.8ゴール」も下回ったことになる。
最後に「最もコスパの良い監督」にはリーズのマルセロ・ビエルサ監督が選ばれた。今季の戦力を集めるのに要した移籍金を、今季の勝ち点で割ると1ポイントの値段が出る。その値段が最も安かったのがリーズだという。1ポイントにかかった値段は190万ポンド(約2億8000万円)で最安値。最も費用対効果が高かったチームと言える。
ちなみに、1ポイントの値段が最も高かったのは優勝したシティで970万ポンド(約14億円)だ。
やはりプレミアリーグは金がかかる。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。