5月29日に控えるUEFAチャンピオンズリーグ決勝。ペップ・グアルディオラの下で悲願の初戴冠を目論むマンチェスター・シティと、異なるクラブで2シーズン連続で決勝の舞台にたどり着いたトーマス・トゥヘル率いるチェルシーの激突は、戦術的に見ても最高レベルの一戦となることが期待される。知将2人がどんな駆け引きを見せるのか、両チームのスタイル・メカニズムを踏まえた注目ポイントを紐解く。
コロナ禍で今季も荒れに荒れた欧州サッカーですが、最後を飾るのはマンチェスター・シティ対チェルシーとなりました。マンチェスター・シティのプレミアリーグ独走と、トーマス・トゥヘル就任以降のチェルシーの快進撃には実は共通点がありました。お互いの採用している配置が非常に似通っていたのです。
その配置は、ボールを保持する時に[3-2-5]になること。3バックと2セントラルハーフでボールを運び、5トップでゴールを狙います。特徴としては、ポジションチェンジをすることで5トップの選手が役割を入れ替えて、相手の基準点を乱すことにあります。シティは極端に言えば、5枚全部の役割を入れ替えることもあります。一方で、チェルシーは大外レーンと内側レーンでの交換、そして中央3レーンでの交換を最も好んで行っていました。この5トップによるレーンチェンジを基軸とする攻撃を、私は勝手に“5レーンアタック”と呼んでいます。
両者の差異に注目してみると、ボール非保持時の形となります。シティは偽サイドバックによる3バックへの変化をボール保持で行い、ボール非保持の際には4バックを採用しています。対照的に、チェルシーはボール非保持でも3バックのままです。この差は、大外レーンにどのような選手を配置するかに現れています。シティの大外レーン担当がリヤド・マレズやフィル・フォデンなのに対し、チェルシーはベン・チルウェルやリース・ジェイムズだと言えばその違いがわかるでしょう。もちろん、シティの方が攻撃的な選手を配置できている差配になっています。
そんな両チームのぶつかり合いですが、チェルシーが基本的な配置[3バック]を捨てる可能性はほとんどありません。変化があるとすればマンチェスター・シティでしょう。
ポイント1:シティのボール非保持戦略
……
Profile
らいかーると
昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。