リールのGKマイク・メニャンが5月25日、ミラノ市内の病院でメディカルチェックに応じた。イタリアの地元紙は「ミランがGKジャンルイジ・ドンナルンマの退団に備えて獲得に動いている」と報じた。
法外な手数料に難色
5月23日のセリエA最終節でアタランタに2-0と勝利し、来季のUEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得を決めたミランだが、22歳のイタリア代表正GKの去就については未定とされた。
契約は今年の6月30日までとなっているが、選手側とクラブとの間で契約延長についての折り合いがついていなかった。その要因は金銭面、そしてその間に介在するドンナルンマの代理人ミーノ・ライオラ氏の意向が影響としているとの見方が地元では多勢を占めている。
『トゥットスポルト』は「選手側からは少なくとも1000万ユーロ(約13億円)の年俸が要求されているが、クラブはあくまで成功ボーナスを含めた上限を800万ユーロ(10億6千万円)に設定。加えて契約更新に際し、ライオラ氏から1500万〜2000万ユーロの法外な手数料を要求されていることに、クラブは難色を示している。下部組織出身の生え抜きなのに保有権を支払わなければならないようなものだ」と報じた。
一方、衛星放送『スカイ・スポーツ』によれば、ミランはドンナルンマ側に対してCL出場権を逃した場合の違約条項を付帯しつつ、年俸700万ユーロの2年契約という条件で契約更新を提示。しかしそれ以来、選手側からの伝達がまったくなく、1カ月に渡って進展がなかったため、メニャンの獲得に舵を切ったという。
ミランからの移籍は既定路線か
地元各メディアの報道では、ミニャンには年俸250万ユーロ+成功ボーナスの5年契約が用意され、リールには移籍金として1300万ユーロが支払われるとされている。ミランを専門とするスポーツ情報サイトの『ミランニュース』は「1カ月半前にクラブが先んじて交渉をした成果だ。リールがリーグ1に優勝した後で持ちかけたなら2000万ユーロの移籍金が加算されていただろう」と報じた。
3年前、やはりドンナルンマの退団に備えてナポリから加入したが、結局ドンナルンマが残留となって出場機会が限られたぺぺ・レイナ(現ラツィオ)の例もあるため、新GKの獲得が、イコール退団決定とは言えない状況である。しかしながら、地元ではもはや既定路線と捉えられている。
ファンは選手に怒りの反応を示し、握った札束にキスをするコラージュ画像をネット上に貼るなどして批判した。また、サッカー関係者はおおむね「ライオラに対して毅然とした態度を示した」という理由でパオロ・マルディーニTD以下フロントへの支持を表明。元カターニアCEOで、移籍市場に詳しいピエトロ・ロ・モナコ氏は『トゥットメルカートウェブ』に対し「選手は残りたいと再三言っているのに、ドンナルンマの運命を決めるのが代理人なのは良くない。手数料の割合の話を聞いた時は髪の毛が逆立つ思いがした。クラブが毅然とした態度で臨むのは正しい」と語った。
一方当のドンナルンマは、EURO2020に備えたイタリア代表のプレ合宿に参加中。代表チームのマネージャーを務めるガブリエレ・オリアリ氏は『ANSA通信』の取材に対し「本人は落ち着いている。契約問題が早く解決することを願う」と語った。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。