ヨーロッパ・スーパーリーグ構想は暗礁に乗り上げたが、もし実現していたらどんな影響を及ぼしたのだろうか。
イングランドでは、マンチェスターの両雄、リバプール、それからロンドンの3クラブ(アーセナル、チェルシー、トッテナム)の計6チームが一度は参戦を表明した。48時間後には参加を撤回し、スーパーリーグの発足は未遂に終わったが、実現していたら6クラブには様々な処分が科せられたはずだ。
所属選手が代表チームの公式戦に出られない、という話もあったが、もしかすると過去の獲得タイトルだって剥奪されたかもしれない。その場合、プレミアリーグの歴史はどう変わっていたのだろうか。マンチェスター・ユナイテッドの13個のリーグタイトルは誰の手に渡ったのだろうか。その検証を行った記事を英紙『The Guardian』が紹介している。
最も恩恵を受けるチームは?
プレミアリーグは今季を除いた過去28シーズンで優勝クラブは7つ。“ビッグ6”以外で頂点に立ったのは1994-95のブラックバーンと、奇跡の優勝を遂げた2015-16のレスターの2チームだけ。残りの26シーズンは、トッテナム以外のビッグ6が優勝しているのだ。
今回の検証は、単純にビッグ6以外の最高位のチームを優勝とせず、ビッグ6との対戦結果も排除して順位を集計し直した。そのため、プレミアリーグ初年度の1992-93シーズンの優勝チームは、マンチェスターUに次いで2位に入ったアストンビラではなく、3位のノリッジになるという。
そうやって計算すると、例えば2015-16シーズンのレスターは2位以下に21ポイント差をつけて断トツで優勝していたことになる。そのレスターは、5位に入った昨季もリーグタイトルを獲得することになる。
こうして優勝チームを割り出すと、最も恩恵を受けるのは、やはりビッグ6に次ぐ実績を誇るエバートンだという。2006-07シーズンからの3連覇を含め、実に8回も優勝した計算になるそうだ。
優勝7度の名将とは?
エバートンに次いで優勝回数が多いのはニューカッスルの5回、続いてアストンビラの3回となる。そして前述のレスターのほかに、ブラックバーン(1994-95、1997-98)やリーズ(1998-99、1999-2000)もそれぞれ2回ずつ優勝したことになる。
そして、ビッグ6の定着で歴代優勝チームが「7クラブ」しか生まれていない現状とは違い、実に「12クラブ」が頂点に立つというバランスの取れたリーグになるようだ。そのため、2015-16シーズンのミラクル・レスターは決して奇跡ではない。もし奇跡と呼ぶべきクラブがあるとしたら、それは2000-01シーズンに昇格1年目で頂点(実際は5位)に立ったジョージ・バーリー監督のイプスウィッチだ。
また、これまでタイトルとは無縁のフルアムでさえ、2010-11シーズンに優勝したことになる。残念ながら香川真司(マンチェスターU)や南野拓実(リバプール)のタイトルは剥奪になってしまうが、2015-16シーズンの岡崎慎司の前年、サウサンプトンの吉田麻也が見事に頂点に立っていることになる。セインツは2014-15シーズン、ロナルド・クーマン監督の下で快進撃を見せてビッグ6に次ぐ7位に入っており、クラブ史上初のリーグ制覇を遂げたことになるのだ。
2017-18シーズンには無骨なバーンリーが、そして2018-19シーズンには現在2部にいるワトフォードがリーグ優勝した計算になる。
そして今季に関してだが、ビッグ6を除いた14チームによる26試合制のリーグ戦を制するのは、レスターかと思いきやウェストハムだった。最終節を前に、勝ち点56(17勝5分け3敗)で2位以下に9ポイント差をつけて優勝を決めている。
これでデイビッド・モイーズ監督は、エバートン時代を含めて通算7度目のプレミアリーグ制覇となる。そう考えると、やはりモイーズは凄い。
Photos: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。