先日、アラン・シアラーとティエリ・アンリがプレミアリーグの殿堂入りを果たした。
彼らは言わずと知れた歴代有数の名ストライカーで、今さら説明は不要だが、彼らがプレミアリーグでどんな記録を残したのか、改めておさらいしよう。
偉大な記録を残したシアラーとアンリ
シアラーはブラックバーンやニューカッスルでゴールを量産し、プレミアリーグ歴代最多となる通算260ゴールの記録を打ち立てた。さらに彼は、アンディー・コールとともに1シーズンの最多ゴール記録(34点)も有するほか、1試合最多ゴール(5点)や最多PKゴール(56点)といった記録も保持する。一方で、あまり知られていないがPK失敗数もウェイン・ルーニーと並んで最多だという(11本)。
元フランス代表のアンリはというと、プレミアリーグ歴代6位の175ゴールを誇り、クリスティアーノ・ロナウドやネマニャ・ビディッチと並びプレミアリーグ年間最優秀選手賞を最多受賞している(2回)。さらに2002-03シーズンの20アシストは、ケビン・デ・ブルイネ(2019-20)と並び1シーズンのプレミア記録となっている。
やはりどちらも偉大な記録を残しているわけだが、先日プレミアリーグで新たな記録が誕生した。それは、途中出場の最多試合数である。これまでは、リバプールやストークなどで活躍した元イングランド代表FWピーター・クラウチの「158試合」が記録だった。それを塗り替えたのがリバプールのMFジェイムズ・ミルナー(35歳)である。
万能性ゆえに重用されるミルナー
2002年から19年間、常にプレミアリーグでプレーしているミルナーは、歴代5位となるプレミア通算562試合の出場数を誇る。そして今月24日のニューカッスル戦に58分から投入され、159回目の途中出場を果たしてクラウチの記録を更新した。「ミルナー、おめでとう。誰もが目指している記録だからね!」と、クラウチはSNSで冗談を飛ばしたが、なかなかどうして凄い記録に思う。
というのも、同記録のトップ6の選手を見ると、ジャーメイン・デフォーやシェーン・ロングなど、ミルナー以外はすべてFWの選手なのだ。やはり途中出場となると、ゴールが欲しい時に投入されるアタッカーが多い。しかしミルナーは、若い頃こそWGで起用されることもあったが、主には中盤の選手。それでもこれほど途中出場が多いのだ。
その理由は彼の万能性にあるだろう。中盤ならどこでもこなす他、リバプールではSBを任されることも多く、2016-17シーズンには左SBのレギュラーだった。さらにマンチェスター・シティ時代には、数回だがマヌエル・ペジェグリーニ監督の下で“偽9番”を任されることもあった。ベンチに置いておきたい便利屋なのだ。試合終盤、守備固めとしても、攻撃のアクセントとしても使えるし、監督の思惑をちゃんとくみ取ってくれるのだ。その信頼性がこの記録を生んだのである。
幸いヨーロッパ・スーパーリーグ発足案は暗礁に乗り上げたが、先日リバプールが参戦を表明した際には、試合後のインタビューで反対を口にした。慎重に言葉を選びつつも「個人的な意見しか言えないが、私は嫌だし、実現しないことを願う。理由は皆さんが言っていることと同じだ」と完全否定したのだ。こういう人間性が、監督からの信頼を生むのだろう。そう考えると、今後さらに途中出場の記録を伸ばしそうだ。
ちなみに今回の「交代出場記録」では、意外な記録にも焦点が当たった。それは「最も交代させられている選手」である。これはエバートンからサウサンプトンにローン中のFWセオ・ウォルコットだ。同選手はスタメン出場242試合のうち、150試合も途中でベンチに下げられている。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。