ユベントスは4月21日、公式声明でヨーロッパ・スーパーリーグ計画の凍結を宣言した。「参加を表明したクラブから撤退の要望がなされ、合意が進まなかった。従って、計画には競技面や商業面において合理性があると確信するも、当初の意図通りに計画が遂行される可能性は縮小したと認識する」と発表した。4月19日に計画の公式発表がなされてから、わずか2日後のことだった。
その動きに批判が集中
公式発表がなされると全世界から非難が殺到し、発起者の12クラブからイングランド勢の6クラブが脱退。イタリアではインテルが撤退を表明し、ミランも「ファンの反応には敏感にならなればならない」という理由で二の足を踏む意思を伝えた。
声明の中でユベントスは「引き続きクラブとサッカー界全体に長期的な価値の構築がなされるよう尽力し続ける」とはしたものの、少なくとも当面は諦めざるを得ない状況に陥った。
スーパーリーグ計画の中心人物の1人として注目されたのは、アンドレア・アニェッリ会長だった。19日のリーグ発足発表に先立って、これまで就任していた欧州クラブ協会を突然辞任。そしてスーパーリーグ発足の際には副会長の座に就くなど、センセーショナルに新大会発足をアピールした。
だが、国内外のサッカー関係者とファンからは非難が噴出。特にこれまで密接に協力関係を築いていたはずの欧州サッカー連盟(UEFA)のアレクサンドル・セフェリン会長からは「こんなに人を欺く人間は人生の中で見たことがない」とまで強烈に批判された。
「タイミングと伝達方法を間違えた」
その間、状況を打開しようとしてか、アニェッリ会長は国内主要紙2紙からインタビューを受けてスーパーリーグの理念の説明を図った。しかし21日朝に新聞が出る前に、イングランドの6クラブが脱退。同日午前中に「プロジェクトは良質のものだと確信していたが、6クラブだけでは始められない」と白旗宣言を出した。
しかし、その際にも「イギリス政府はEU脱退時の反発と同様なものと理解しスーパーリーグに反対した」などとの持論を展開し、同国政府から報道官を通じて「ジョンソン首相は国内におけるサッカーの重要性を鑑みて反対しただけ」と反論された。
「サッカー業界最大の問題は安定性だ。問題は金融だけではなく、顧客との関係構築にある。若い世代はビッグイベントを欲し、カンパニリズモ(地域愛)に結び付いてない。世界のファンの1/3は少なくとも2つのクラブを応援し、その2つにはスーパーリーグの発起者クラブが入っている」
『コリエレ・デッロ・スポルト』のインタビューの中でアニェッリ会長は新フォーマット創設の意義を訴えていたが、それも時すでに遅し。インテルの元会長であるマッシモ・モラッティ氏からは、地元紙のインタビューの中で「アイディアはあったんだろうが、タイミングと伝達方法を間違えたように私には思える」と苦言を呈されていた。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。