先日、アメリカMLS のシアトル・サウンダーズが伝説のギタリスト、ジミ・ヘンドリックスをモチーフにしたユニフォームを発表した。
これまでシアトル出身のジミ・ヘンドリックスの楽曲をホームゲームで流してきたサウンダーズは、偉大なミュージシャンに敬意を表して今シーズンのアウェイユニフォームを“ジミ・ヘンドリックス・キット”と名付けて発売した。
紫の刺激的なユニフォームには“ジミヘン”のサインや歌詞も描かれているそうで、音楽ファンにはたまらない1枚となっている。そして、このシャツをきっかけに英紙『The Guardian』が「ミュージシャンをモチーフにしたユニフォーム」を特集しているので紹介しよう。
“神様”とのコラボはお蔵入りに
その記事によると、アイルランドのボヒーミアンFCがこれまで何度かミュージシャンとのコラボに乗り出しているという。同クラブは2018年にボブ・マーリーのイラストが入ったユニフォームの発売を発表。ボブ・マーリーは1980年に同クラブの本拠地でライブを行っており、それを記念してクラブが今は亡きレゲエの神様をユニフォームにデザインしたのだ。
しかし、ボブ・マーリーの事務所から「肖像権侵害」を注意されて発売を断念。ボヒーミアンは「ボブ・マーリー」のイラストを「拳」のイラストにデザイン変更して販売した。
コラボには苦い思い出のあるボヒーミアンだが、今シーズンこそ正式にミュージシャンとコラボしてユニフォームを発売している。それが、ダブリン出身のバンド『フォンテインズD.C.』のバンド名を胸に入れたアウェイシャツである。これはチャリティー団体とのコラボでもあり、収益の15%がアイルランドのホームレス支援団体に寄付されるという。
一方、イングランド2部リーグに所属するコベントリーは昨シーズン、1970年代に同都市で起こった“2トーン”というムーブメントをモチーフにしたユニフォームを製作した。『ザ・スペシャルズ』などの人気バンドが『2トーン・レコード』社に所属していたため、スカやパンクを融合した音楽が“2トーン”と呼ばれてイングランドで社会現象が起きたのだ。“2トーン(2色)”には人種の垣根を超越するという思いも込められている。
胸スポンサーになるバンドも
ドイツでは、デュッセルドルフが同都市出身のパンクロックバンド『Die Toten Hosen(ディ・トーテン・ホーゼン)』とたびたびコラボしており、昨シーズンも記念のユニフォームを着用し、それをオークションにかけて収益をクラブ下部組織の施設費に充てた。
プレミアリーグで首位を走るマンチェスター・シティも昨シーズン、黒に黄色のラインが入ったアウェイユニフォームを発表した。『ザ・ストーン・ローゼズ』や『ニュー・オーダー』などの人気バンドを輩出した、1980年代のマンチェスターの“マッドチェスター”という音楽ムーブメントを取り入れたデザインである。当時、マンチェスターで流行の拠点だったナイトクラブ「ハシエンダ」で使われていたカラーリングを再現したのだ。
さらには、何度か日本にも来ている英国の人気バンド『エンター・シカリ』が、今季イングランド6部のセント・オルバンズ・シティの胸スポンサーとなって話題になっている。
このように、フットボールと音楽は切っても切れない関係にあるので、今後もコラボユニフォームに注目したい。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。