“高嶺朋樹記事”について本人が言及。筑波大学での日々とこれから
フットボリスタでは昨年秋から今年にかけてコンサドーレ札幌所属の高嶺朋樹選手に関する記事を2本公開した。
『高嶺朋樹がデータで示す大卒Jリーガーのメリットとは? 筑波大学蹴球部・小井土監督と読み解く卒業研究』
『筑波大学蹴球部データ班が分析。高嶺朋樹の強みとコンサドーレ札幌で求められる役割』
前者の記事は大学の監督、後者の記事は大学の後輩による高嶺評であるが、これらの記事に書かれていることを当の本人はどのように捉えているのか話を聞いた。
大学進学が間違いではなかった
――まずは2020年11月27日に公開した記事『高嶺朋樹がデータで示す大卒Jリーガーのメリットとは? 筑波大学蹴球部・小井土監督と読み解く卒業研究』について伺わせてください。卒業研究のテーマを『進路』にされた理由は何だったのですか?
「僕は大学を経由してプロになりましたが、高卒でプロになった選手との違いを知りたくて。筑波で4年間を過ごして、どの大学に進学するかもその先のキャリアにおいて大切だと感じたのでこのテーマにしました」
――数ある大学の中で筑波大学に入学されました。
「筑波に入学した理由はまずサッカーの部分で強豪であること。(関東)1部でプレーできることも大きかったです。あと、勉強との両立ができる環境。大学に進学するからには勉強もする4年間を過ごすことは(高卒時に)決めていたので、筑波に入れない場合は浪人する覚悟でした。サッカーだけを目的に別の大学に進学する選択肢はなかったですね」
――筑波大学蹴球部は『一人一役』という活動コンセプトを持ち、プレー以外の活動や学びが推奨されるチームです。高嶺選手にとっては恵まれた環境でしたね。
「僕は『企画局』に所属して、試合時の集客を目的としたイベントなどを担当しました。試合に出ることも多かったので、中心的なメンバーというよりは裏方でしたが。ホーム開催時はピッチ周辺で飲食店を出店したり、キックターゲットコーナーを設けたり。筑波大生やつくば市の方々を対象とした応援バスツアーも行いました」
――卒業研究に話を戻します。この研究の中には、高校卒業後の進路別にJリーガーの平均現役継続年数が記載されています。J1クラブに進んだ選手は9.1年、J2クラブは7.2年、J3は4.6年。この理由をどのように分析されていますか?
「そこは単純に、所属カテゴリーが上の方が下のカテゴリーでプレーするチャンスが多いということだと思います。J1で出場機会がなければJ2、J2でもダメであればJ3ということですね。あと、大事だと思うのは年収。高卒でJ3に入ると年収が低く、長く現役を続けることは難しい。J3からJ1にステップアップする自信があればいいですが、データ的には大学で4年間過ごして、上のカテゴリーのクラブに入団する可能性を広げる選択肢を検討する価値はある……そんなことを卒業研究では書いた記憶があります」
――卒業研究を書き終えた上で大学進学という自身の選択に対する評価を教えてください。
「この(卒業研究に記載されている)データを見て感じることは人それぞれだと思います。ただ、僕としては大学進学が間違いではなかったと思いました。高校卒業時はプロでやれる自信もなかったので」
――プロの世界に対して不安に感じていたことは何ですか?
「(U-18)プレミアリーグやプロの練習参加である程度自分のプレーが通用することはわかっていました。ただ、圧倒できるほどではない中で『サッカーでお金を稼ぐ』『サッカーで生活していく』と自信を持って言えませんでした。プロはシビアな世界じゃないですか。自分より良い選手がいれば試合に出られないし、出られない時間が長ければクビになる。能力的にも精神的にもまだ足りないと思いました」
――その点、大学では4年間自分とじっくり向き合えますからね。
「大学生の頃は怪我も多く、サッカーができない期間も長かったのですが、プロだった場合はクビになっていた可能性もあります。大学にはクビはないので、プロサッカー選手としての土台を作る良い時間だと思っていました。試合に出られない時間も筋トレやターン、サイドチェンジの練習など、自分の特徴を作ることを意識して過ごしました」
――小井土監督から高嶺選手の成長のために2学年上の戸嶋祥郎選手(柏レイソル)を意識してもらったとお聞きしました。
「直接的に(小井土監督から)言われた記憶はないですが、戸嶋さんの練習に対する姿勢は模範にしていました。よく覚えているのは、戸嶋さんが4年生の時に同学年のチームメイトが寝坊したことを受けて、4年生全体で通常は1年生が担当する荷物運びをする期間があったんです。けど、戸嶋さんだけはその期間が終わってもずっと荷物を運んでいました。そういう行動で周りを引っ張っていく存在でした」
――高嶺選手の世代の筑波大学は戸嶋選手をはじめ、同期には三笘薫選手(川崎フロンターレ)や阿部航斗選手(アルビレックス新潟)、山川哲史選手(ヴィッセル神戸)など、現在プロで活躍する選手も多いです。お互いに意識する部分はありましたか?
「同学年の切磋琢磨はありましたね。周りに遊ぶところがない環境だったこともありますが、オフの日も一緒に自主練や筋トレをしました。薫は実績的に先を行く存在で刺激を受けましたし、山川や阿部は食事や睡眠に関する知識があって、みんなに尊敬できる部分がありました。だから、この学年でプレーできたのは本当に良かったです」
――大学はサッカーに関連する知識を増やす上で適した環境ですね。
「その通りだと思います。それぞれの分野に専門の先生もいて、そういった方のアドバイスを受けてトレーンングする環境があるのが筑波大学の特徴だと思います」
――多くの先生から学びを得た4年間だったと思いますが、小井土監督から得た学びは何ですか?
「多くを語る監督ではないですが『選手に考えさせる』ことに長けた方だったと思います。プロの世界も経験されているので常に高い意識を選手に求められていて。僕は大学3年生くらいからプロになれると思っていましたが、そこをゴールにするのではなく、プロで活躍することにフォーカスして日々の練習を過ごせたのは小井土さんの声掛けによる部分が大きかったと思います」
何を武器にこの先を戦っていくのか
――続いて、2021年2月24日に公開した記事『筑波大学蹴球部データ班が分析。高嶺朋樹の強みとコンサドーレ札幌で求められる役割』についても聞かせてください。大学の後輩が自身について分析するこの記事を初めて読んだ時、どのような感想を持たれましたか?
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Profile
玉利 剛一
1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。その後、筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。2019年よりフットボリスタ編集部所属。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆を行っている。サポーター目線をコンセプトとしたブログ「ロスタイムは7分です。」も運営。ツイッターID:@7additinaltime