ベルギーのプロリーグ機構は、4月2日の「世界自閉症啓発デー」に合わせ、第32節の全試合に自閉症スペクトラム障害で苦しむ子供たちを、人数限定で招待した。
無観客ならではのアイデア
新型コロナウイルスの世界的大流行のため、現在、ベルギーリーグの全試合は無観客で開催されており、毎試合、観客の歓声がない静かなスタジアムでゲームが行われている。
この静寂なスタジアムの中で自閉症スペクトラム障害の子供を招待するアイデアが、ロイヤル・アントワープのボランティアから生み出された。2人の自閉症スペクトラム障害の子供を養っている、アントワープ在住のイーネ・スフールマンスさんは「新型コロナウイルスのせいで、すべての試合が無観客で開催されている。ここで何かをするというアイデアを思いついた」と話した。
自閉症スペクトラム障害は、多くの遺伝的な要因が複雑に関与して生み出される脳機能障害の一つだ。言語やコミュニケーションの障害、社会性の低下、対人的相互関係を築けず、感情を共有できないなどの症状があり、感覚過敏または鈍麻などの感覚的な問題が特徴的である。精神疾患、知覚障害、ADHDなどが併存することが多い。
継続的に実施するクラブも
イーネ・スフールマンスさんは「多くの観客を集めているスタジアムの中では、自閉症スペクトラム障害の子供たちをスタジアムに入れるのは困難を生じる。コロナの流行によって空っぽになったスタジアムなら、感覚過敏な子供たちは快適にフットボールを楽しむことができるでしょう」と発言した。このアイデアはプロリーグ機構も高く評価し、スポーツ大臣のベン・ウェイツ氏のサポートの下で実施されることになった。
第32節の取り組みはそれぞれの会場で好評を得られ、ホームゲームを開催したコルトレイクは、アウェイのクルブ・ブルッヘのサポーターも合わせて約50人を迎え入れた。試合後には公式Twitterアカウントでその動画を投稿している。
ベルギーでは好評を得られた今回の取り組み。第32節ではアウェイだったメヘレンは継続的に行うことを発表しており、自閉症スペクトラム障害の子供たちを、毎試合50人限定で募集している。
Photo: Getty Images
Profile
シェフケンゴ
ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。