往年のスターの名誉回復へ。八百長事件で資格停止に追い込まれた元イタリア代表FWジュセッペ・シニョーリ氏の資格回復を訴える署名活動を、ファンが中心となって開始した。同氏は今年3月までに、裁判所から無罪判決を勝ち取っていた。
複数の裁判で無罪を勝ち取る
ことの発端は2011年6月。当時の一連の八百長スキャンダルを追っていた捜査当局は、国際的な違法賭博グループに関わっていた疑いが強いとしてシニョーリ氏の身柄を拘束。同年8月にはイタリアサッカー連盟(FIGC)から5年間の資格停止処分を受け、2015年にも検察からスポーツ上の不正容疑ならびに犯罪組織との結託による容疑で起訴されていた。
八百長事件は複数の試合に及んでおり、従って起訴には複数の地方検察が関わっていたが、このうち犯罪組織への関与等を調べていたクレモナ地検については、裁判が進まなかったため出訴期限切れとなった。
だが、潔白を望むシニョーリ氏は残る裁判について出訴期限切れとなることを望まず、裁判を続行。そして2月にはピアチェンツの地方裁判所で「(不法行為の)事実は存在しない」という理由で無罪を勝ち取り、さらに3月30日には2試合の八百長行為について裁判をしていたモデナ地検も同様の理由で無罪とした。
ファンは名誉回復を後押し
シニョーリ氏は「10年の後に終わった。私と私の弁護士は、自分が潔白であることにいては何の疑いもなかった」と地元メディアに発言。そして「私はスポーツの現場において資格が回復されることを目標に、できる限りのことをすべてやった。最初の勝利だが、この後もさらに勝利が続くことを願いたい」とサッカーの世界で仕事をしたいとする意思を表明した。
裁判所が無罪としたことを踏まえ、次の目標はFIGCから下された資格停止の撤回である。そのシニョーリ氏の姿勢を、ファンが後押しした。オンラインの署名収集および届け出を業務とするウェブサイト『change.org』にFIGCのガブリエレ・グラビーナ会長宛の公開書簡を掲げ、「資格を回復することを通してイタリアサッカーを築いた彼にふさわしい役職をあてがい、また我われに素晴らしい過去の記憶と夢を返してほしい」と訴えた。
4月8日時点で、このオンライン署名には3500を超える署名が集まっている。
フォッジャやラツィオ時代の活躍で強烈な印象を残し、1994年アメリカW杯の準優勝に貢献した名選手が八百長に関わっていたという疑惑は、ファンの間に大きなショックを与えた。だが、時間はかかったもののシニョーリ氏の名誉は回復される方向に向かいそうだ。
ただ一方で、判事の中からは「無実ではなく出訴期限切れによるもの。裁判を進められなかった我われの司法がのろく、能力不足だったことの証明に過ぎない」との厳しい声も出ている。
Photo: Getty Images
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神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。