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第2波の到来とともにコロナ感染が広がるアルゼンチンサッカー界

2021.04.07

 新型コロナウイルス感染症の第2波に突入したアルゼンチンでは、サッカー界でも感染が広がっている。

 今季のアルゼンチン1部リーグは昨季同様、「スーペルリーガ杯」として短期カップ戦形式で2月中旬からスタートした。感染拡大の勢いが比較的、収まっていた開幕当初とは異なり、1カ月も経たないうちに国内が第2波を迎えたのと同時に、チーム内での感染例が一気に増加する事態を招いている。

複数チームでクラスター発生

 スーペルリーガに参加する26チームのうち、最初に集団感染が起きたのはサルミエントだった。3月下旬、トップチームの選手及びスタッフから20名の感染が判明し、そのうちマリオ・シアクア監督を含む2名は症状が見られたために入院。続いてヒムナシアでも、16名の選手から陽性反応が検出された。

 さらにバンフィエルドでは、トップチームに属する15名の感染を確認。このため、がん治療経験者のホナス・グティエレスも大事を取って隔離されることになり、4月5日に行われたエストゥディアンテス戦ではメンバーの大半がリザーブチームの選手となった(試合は2-2のドロー)。

 また、来たる4月10日にラシンとのクラシコを戦うインデペンディエンテでは、レギュラーGKのセバスティアン・ソサから陽性反応が検出された他、4月6日にはフリオ・セサル・ファルシオーニ監督も感染していることが発覚。

 ファルシオーニ監督は2017年にがんの治療を行っていることから、昨年、6カ月以上の中断期間を経てトレーニングを再開した時も大事を取り、チームのメンバーとの接触を極力、避けていた。

公衆衛生軽視に不満の声も

 スーペルリーガ杯に参加している1部リーグのチームの他、下部リーグでも集団感染が発生しているが、試合が延期されたケースはまだない。

 これについて、国内では一部のメディアが「利益を優先して公衆衛生が軽視されている」と指摘しており、『ラ・ナシオン』紙のクリスティアン・グロッソ記者は「感染防止対策を守らない非常識と、それを黙視するアルゼンチンサッカー界」というタイトルのコラムを掲載。対戦相手がレギュラーメンバーの大半を欠く状況にあることを知りながら、どのチームも連帯意識を見せず黙り込む姿勢を厳しく批判している。

 ヒムナシアのレアンドロ・マルティーニ監督は、スポーツ紙『オレ』による取材の中で「もし同じような集団感染がボカ・ジュニオールやリーベルプレートのようなビッグクラブで起きていたら、試合は予定通り行われていただろうか。(大ニュースになり)メディアによる圧力から試合は延期されるだろう」と語り、「すべてのケースが同じ尺度で測られていない」と不満を漏らしている。

 また、アルゼンチンでは現在、コロナ変異株の感染拡大防止策としてブラジルとチリを含む一部の国からの入国を一時的に中断しているが、コパ・リベルタドーレスの試合は今までどおりの特例に基づいて続行されることが南米サッカー連盟によって明らかにされている。


Photo: Getty Images

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インデペンディエンテバンフィエルドホナス・グティエレス新型コロナウイルス

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Chizuru de Garcia

1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。

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