シーズン序盤は苦しい戦いが続き、アントニオ・コンテ監督への批判が集まっていたインテル。しかし、後半戦は8戦全勝とV字回復を見せ、今やセリエAで首位を独走している。果たして何が変わったのか。ミラノ在住の神尾光臣氏に解説してもらおう。
「失敗のシーズンではないのか?」
2月9日、コッパ・イタリア準決勝ユベントスvsインテル戦後の記者会見で、地元記者からアントニオ・コンテ監督にそんな一言が飛んた。リーグ戦の優勝候補の一角であるユーベとの2試合はホームの第1レグを落とした上で敗退、地元メディアや識者はインテルに辛辣な評価を下した。
むろん、カップ戦の準決勝の結果だけをとってそんな見方をされたわけではない。リーグ戦ではスタートで出遅れ、CLではイタリア勢で唯一グループステージ突破に失敗した。戦力になり切れない選手がいる一方、主力のコンディションも下がり、試合展開にも安定感が出ない。年明け早々にリーグ戦ではサンプドリアに敗れシーズン2敗目を喫し、首位を行くミランの背中は遠ざかる。
「試合内容を見ればユーベとの差は詰まったことを示せたではないか。失敗かどうかは最後にわかる」
当時コンテ監督のそんな強弁を額面通りに受け止める者は、ファンの間にも少なかった。
ところがどうだ。
1カ月が経過し、インテルはリーグ戦において優位を築いた。ユーベ戦の直後に行われた第22節のラツィオ戦では、順位の浮上を続けていた相手に完勝し首位に躍り出る。そして首位対決となった第23節のミラノダービーでは、ミランを0-3で破って勝ち点差を広げた。その後もペースを落とさずに、気がつけば後半戦は8戦全勝。新型コロナウイルス感染者の続出で医療当局からストップがかかったため第28節のサッスオーロ戦は延期となったが、その状態でも2位ミランとの勝ち点差は6に広がっている。
「もはやスクデットを”失う”ことができるのはインテルだけ」
ジェノアの主将ドメニコ・クリッシトも、元日本代表監督のアルベルト・ザッケローニも、最近はすっかりサッカー界のご意見番と化したアントニオ・カッサーノも、あらゆるサッカー関係者は口をそろえてこう言うまでになった。……
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。