SPECIAL

杉崎健アナリストが現場目線で分析。「鬼ごっこ」にみる上田綺世の凄み

2021.03.05

2020シーズンのJ1リーグで、プロ2年目にして2桁得点を叩き出した上田綺世。2021年は所属する鹿島アントラーズだけでなく、東京五輪代表のエースとしても重責を担うであろう22歳を、ヴィッセル神戸、ベガルタ仙台、横浜F・マリノスを渡り歩いたプロサッカーアナリストの杉崎健氏に分析してもらった。

 プロサッカー選手のトレーニングでも、ウォーミングアップ等で「鬼ごっこ」を採用することがある。体を起こす時や、遊びや盛り上がりの要素を入れる時などだ。

 そして興味深いことに、FWがあっさり捕まるケースは少ない。それは単にスピードがあるから、ではない。小さなスペースで行われる鬼ごっこでは、むしろ鬼役の癖や性格まで細かく読むことが重要となる。一歩目や二歩目の初速はどれくらいか。切り返しやターンにどれくらいついて来れるのか。フェイントを入れてくるのか。苛立ちやすいのか。実際に味方を盾にして逃げるような「ずる賢さ」を発揮するのも、FWだったりする。

 それもそのはず、ゴールを奪う役割を担うFWは、特にペナルティエリア内で相手のDFに捕まっていては、そもそもシュートを打つことができない。もちろん相手のマーク方法やオフサイドも考慮しなければならないが、基本的には16.5m×40m=660㎡の中で、DFを鬼役にした1対1の鬼ごっこを連続して行っていると言っても過言ではないだろう。

「鬼役」になるタイミングの見極め

 現役Jリーガーの中でも特にペナルティエリア内での鬼ごっこに長けているのが、鹿島アントラーズFW上田綺世選手だ。彼は鬼の視野から消える動きが抜群にうまい。……

残り:2,224文字/全文:2,901文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

J1リーグ上田綺世鹿島アントラーズ

Profile

杉崎 健

プロサッカーアナリスト。日本大学卒業後、データスタジアム株式会社に入社。サッカーのデータ分析やソフトウェア開発に携わる。同時に、Jリーグ各クラブへの分析ソフトウェアの販売や、データ分析のサポート、東大ア式蹴球部分析チームの立ち上げに寄与したのち、2014年にヴィッセル神戸の分析担当としてクラブ入りし、2016年にはベガルタ仙台の分析担当に就任。2017年から2020年まで横浜F・マリノスのテクニカルスタッフを務め、2019年にはビデオアナリストとして同クラブの15年ぶりのJリーグ制覇に貢献した。2021年よりアナリストとして培った知識や技術を日本サッカーに還元するため、フリーで活動を開始。Jリーガーのパーソナルアナリストや東大ア式蹴球部のテクニカルアドバイザーを務めながら、自身が運営するオンラインサロン【CiP】でアナリスト養成に注力している。

関連記事

RANKING

TAG

関連記事