ローマは2月26日、前経営陣から引き継いだ新スタジアムの建築計画を実行しないことを発表した。
「実現不可能なものと判明」
2012年、市南部のトール・ディ・バッレ地区にある競馬場跡地の再開発計画に参入し、新スタジアムの建築費用はクラブが持つということで計画をスタートさせた。
紆余曲折の末、2017年には市から周辺施設の開発を含めた建築計画の承認を受けたが、昨年8月にクラブを買収したダン・フリードキン会長以下の現経営陣が計画を再検証。その結果、「トール・ディ・バッレ地区の不動産開発計画が実現不可能なものと判明したので、同敷地内にスタジアムを建築して使用することについての興味は確約できず、その前提条件も整っていないと判断した」と決断するに至った。
これでジェームス・パロッタ前会長の時代に立ち上がり、9年間を経ても日の目を見なかった新スタジアム計画は破棄されることになった。
センシ家がオーナーを務めていた時代からも専用スタジアム建築計画は存在し、その当時、並びにパロッタ体制下でのスタジアム建築計画発表で2度プレゼンテーションを務めた元主将のダニエレ・デ・ロッシ氏は地元メディアに対し「結局スタジアム計画はプラスチックのままで、小部屋の中に入ったままになってしまった。新スタジアムの建築はイタリアサッカー界にも後押しとなっただろうに」と残念そうに語った。
建設計画そのものは継続中か
ただ、今回ローマが発表したスタジアム建築計画の破棄は、当該地区の再開発計画に関わっていた他の関係者には寝耳に水の出来事だったようだ。トール・ディ・バッレ地区の不動産開発を担っていた不動産会社はローマへ抗議文を送り、「役割はもはや撤回できないものだから、ローマには撤退する権利はないはず」と非難した。
一方で、遅々として進まない計画や、トール・ディ・バッレ地区の土地に別の不動産会社も参入するという話にフリードキン会長が難色を示し、撤退を検討しているという噂も地元では大きかった。
もっとも、ローマの現経営陣はスタジアムの建設計画そのものの興味を完全に失ったわけではないようだ。
『コリエレ・デッロ・スポルト』は「フリードキンが周辺施設開発の経費を抑え、計画をスリムにした上で新スタジアムだけを欲しがっている」と報じており、ローマ市のビルジニア・ラッジ市長と近日中に会談を持ち、スタジアム建設に使用可能な土地があるか新たに交渉をすると見られている。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。