FC東京のFW原大智のNKイストラへの完成移籍が決まった。クロアチア1部に所属する彼らはアラベスの傘下クラブとしても知られている。残留争いの真っただ中にいるクラブが、なぜ21歳の日本人FWに白羽の矢を立てたのか――クロアチアサッカーに詳しいジャーナリストの長束恭行氏に解説してもらおう。
「チームを離れることは寂しいし、不安なこともありますが、人生一度限りなので新たに環境を変えて戦おうと決意しました」
FC東京の公式ホームページで、原大智は海外挑戦の理由をそのように語った。一昨シーズンのJ3でトップスコアラーになり(19得点)、昨シーズンは途中交代が中心とはいえトップチームで公式戦33試合に出場。日本では稀有な191cmのサイズを武器にし、Jリーグでプレーを続けていても前途洋々たるキャリアを築けたはずだろう。しかし、21歳の若武者は海を越えることを決断した。新たな環境はクロアチア。完全移籍する先は目下、クロアチア1部リーグ最下位の「NKイストラ1961」(以下、イストラ)だ。
スペイン体制から3年…「育成クラブ化」の弊害
イストラが本拠を置くプーラはクロアチア北西部、イストラ半島の先端にある風光明媚な港町。中心部にローマ帝国時代の円形闘技場や神殿が残り、周囲には海水浴に適したビーチが点在。温暖な気候に恵まれ、近隣国からの観光客のみならず、あらゆるサッカーチームがキャンプで訪れる。
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Profile
長束 恭行
1973年生まれ。1997年、現地観戦したディナモ・ザグレブの試合に感銘を受けて銀行を退職。2001年からは10年間のザグレブ生活を通して旧ユーゴ諸国のサッカーを追った。2011年から4年間はリトアニアを拠点に東欧諸国を取材。取材レポートを一冊にまとめた『東欧サッカークロニクル』(カンゼン)では2018年度ミズノスポーツライター優秀賞を受賞した。近著に『もえるバトレニ モドリッチと仲間たちの夢のカタール大冒険譚』(小社刊)。