ミハイロビッチの戦術分析コーチとしてサンプドリア、ミラン、トリノ、そして現在はボローニャと、セリエAを舞台に活躍してきたレナート・バルディ。昨季、彼のチームに日本代表の期待の新星が加わった。果たして、新世代コーチの目に冨安健洋はどう映っているのか――『モダンサッカーの教科書』コンビが2年目のシーズンを掘り下げる。
後編では、成長の跡が見られる具体的なプレーからイタリアで求められるDFのディテール、そしてこの逸材の未来について考えてみたい。
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背後からマークする1対1に課題
片野「CBとしてプレーした今シーズン、彼のプレーがどのように向上したか、具体的に教えてください」
バルディ「あらためて言っておかなければならないのは、ボローニャの守備戦術は最終ライン、とりわけCBに大きな負担をかけるものだということです。敵のビルドアップに対しては前線からマンツーマンでのハイプレス、ボールロスト時には前からボールに詰めてのゲーゲンプレッシングが基本的な振る舞いですから、そのプレスがかわされると最終ラインは中盤のプロテクトがない状態で、しかも数的均衡の状況で相手の攻撃に直面することが珍しくありません。トミも広いスペースを1人で見ながら、相手との1対1に対応しなければならない。そこでは小さなミスで後手に回るだけで失点に直結してしまう。さっき触れた失点に繋がったミスの多くは、そうしたシビアな状況で生まれたものです。そこは情状酌量の余地が十分にあります。……
Profile
片野 道郎
1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。