12月中旬に報じられた、東京ヴェルディの経営難。クラブエンブレム・ロゴの刷新をはじめ野心的な取り組みを続けている名門クラブに突然浮上した苦境は、驚きをもって受け止められた。なぜ、彼らは難局に立たされたのか。この問題の背景事情を紐解くことで浮き彫りとなった、日本のスポーツ界全体の市場構造の欧米との違いを含めて解説する。
ヴェルディの経営権をめぐる一連の動きは、ゼビオによる新株予約権の行使、連結子会社化で収束をみた。しかし、なぜヴェルディだけがこの時期に経営難、資金ショートの危機にまで直面することになったのか。コロナ禍で売上が激減したのはどこのクラブも同じで、内部留保が少ないことも同様なはずだ。ヴェルディは、株主も経営者も相対的にスポーツビジネスの経験が豊富であるはず。むしろ、ヴェルディだけが窮地に陥ったことが不可解、と感じる方が自然ではないか。
今年は入場料収入が大幅に落ち込み、どこのJクラブも経営が厳しいなか、様々な経営努力がなされたのであろう、シーズンオフになって実際に存続問題まで深刻化しているクラブは幸いなさそうだ。様々なメディアでも、大幅な売上減に対してデジタルを活用した新たなファンエンゲージメント、新商品の開発、クラウドファンディングなど、新たな収入源を見出す試みがなされたことが報じられてきた。しかし、売上減のマグニチュードに比べればどれも焼け石に水であり、本質的な解決策にはなっていない。……
Profile
利重 孝夫
(株)ソル・メディア代表取締役社長。東京大学ア式蹴球部総監督。2000年代に楽天(株)にて東京ヴェルディメインスポンサー、ヴィッセル神戸事業譲受、FCバルセロナとの提携案件をリード。2014年から約10年間、シティ・フットボール・ジャパン(株)代表も務めた。