本誌12月発売号の育成特集では、現在リーガで首位を走り16人もの下部組織出身者がトップチームでプレーしているソシエダ育成の秘密をロベルト・オラベSDに、育成の名門セビージャの組織改革の全容をカンテラ・ディレクターのパブロ・ブランコとアグスティン・ロペスに、木村浩嗣氏が直撃した。自身もスペインで育成年代を指導していた木村氏が感じた、成功しているクラブに共通する育成のあり方とは何なのだろうか?
今季もCLで4チーム、ELで3チームがグループステージを突破した。突破率は100%。優勝できる力があるとは思わないが、スペインはコロナ禍でも欧州で高い競争力を維持している。この原動力が育成にあることは間違いない。
スペインは欧州有数の育成国である。
データを見ると、5大リーグで外国人依存率が最も低いのはリーガエスパニョーラである(以下数字はすべて『トランスファーマルクト』)。自国選手率では最低のプレミアリーグが28.5%、続くセリエAが40.9%、ブンデスリーガが43.9%、リーグ1が51.5%、リーガは62%と群を抜いて高い。さらに、5大リーグ間の選手の“輸出入”の具合を見てみると、リーガでは23人(フランス20人、ドイツ2人、イングランド1人、イタリア0)を輸入しているのに対して、64人(プレミアに27人、セリエに20人、ブンデスに10人、フランスに7人)を輸出している。
イングランドやイタリアに優秀な国産選手を引き抜かれながらも、国産選手中心のリーグを維持し国際的競争力を保っているのだ。
プロとアマの風通しの良さ
今回、本誌12月発売号の育成特集でソシエダとセビージャの最新育成事情を取材したこと、去る2月にはアスレティック・ビルバオの現地レポートで育成部門の練習と試合をたっぷり見て来たこと、また自分自身が少年チームの監督としてセビージャやサラマンカで育成に携わっていたことから、スペインの育成がなぜ成功しているのか、思っていることを書きたい。……
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。