去る11月2日、ディエゴ・マラドーナが入院したという速報が流れ、サッカー界は騒然となった。
血栓除去の手術を実施
テレビの情報番組は一斉に「マラドーナ入院」の話題を取り上げ、一般のファンはもちろん、各国の選手たちや元チームメイト、クラブや協会・連盟関係者までもがSNS上で「#FUERZADIEGO」(がんばれディエゴ)のハッシュタグの付いた応援メッセージを送り、たとえ主治医のレオポルド・ルーケ(1978年W杯優勝メンバーと同姓同名だが別人)が「緊急ではない」と弁明しても、ただ事でないことは明白だった。
すでにマラドーナがうつ病によるアルコール依存症を患っていることが発覚していた上、その3日前の10月30日、ちょうど60歳の誕生日を迎えた日に行われたコパ・デ・ラ・スーペルリーガ(アルゼンチン1部リーグの代わりに短期開催されるトーナメント)の開幕戦に出向いたマラドーナの体調は明らかに衰弱しており、その映像を見た誰もがショックを受けていたからだ。
その後、入院の理由は「貧血と脱水症状」とされていたことがわかったが、翌11月3日、ルーケ医師いわく「もともと予定されていた」CT検査を行った結果、頭部左側に硬膜下血腫が見付かった。
アルゼンチンのメディア『Infobae』が報じた内容によると、マラドーナと近しい関係者の間では、この血腫が日課としていたボクシング式トレーニングの最中か、もしくは昨年12月、リーグ戦の試合中に外れたシュートを悔やんでのけぞった勢いで倒れた時か、いずれかで頭部に受けた打撲が原因という見方が強いとのこと。ルーケ医師は即刻マラドーナを専門病院に転院させ、その日のうちに血腫除去の手術が行われた。
本人は帰宅を強く希望
当初の入院先だったラプラタ市の病院からブエノスアイレス郊外の病院に移動した際、マラドーナを乗せた救急車はパトカー2台によって先導され、後ろからメディアの中継車やバイクが追いかけるという物々しい光景が展開された。
16年前に集中治療室で生死の境を彷徨った時と同様、病院の前は瞬く間に集結したマラドニアーノ(マラドーナを崇拝するファン)たちの祈りの場と化し、回復を願うメッセージが書かれた貼り紙やフラッグで飾られている。
手術は無事に終了し、現在は鎮静剤を打って休んでいるというマラドーナだが、そこで大きな問題が生じている。施術を担当したルーケ医師が「医学的には順調に回復している。このまましばらく様子を見るために入院を続けることになるだろう」と話す一方、マラドーナは自宅に戻ることを強く希望しているのだ。
ルーケ医師の前に長年マラドーナの主治医を務めたアルフレド・カエ医師も、見舞いに訪れた際に退院許可を強要され、「今のディエゴは手に負えない状態。以前私がキューバで入院させた時とまったく同じだ」と困惑した様子でコメント。
ルーケ医師を始め、弁護士兼付き人のマティアス・モルラらが必死にマラドーナを説得している状況にある。モルラはマラドーナが今のような状態に陥った責任を問われている「取り巻き」の1人だ。
手術から5日が経過した11月8日、ルーケ医師は「ディエゴは日に日に良くなっている。信じられないほどの回復具合だ」と語りながら、この後も入院が続くことを明らかにしている。
Photo: Getty Images
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Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。