2019シーズン限りでズラタン・イブラヒモビッチが去ったLAギャラクシーが新たな“アイコン”として白羽の矢を立てたのは、メキシコ代表の最多得点記録を持つ“チチャリート”ことハビエル・エルナンデスだった。チチャリートは1月21日にLAギャラクシーと3年契約を締結。当然ながらマーキープレーヤー(サラリーキャップの制限外となる特別待遇選手)で、年俸はMLS最高額だという。
VIPイベント、そのお値段は?
ロサンゼルスには「ラティーノ」と呼ばれるメキシコ系移民が多く住んでおり、高い人気を誇るチチャリートは彼らを取り込むのに最適な存在と言える。LAギャラクシーには同じメキシコ代表のジョナタン・ドス・サントスも所属しているが、クラブはとにかくチチャリート推し。公式サイトを見ても、ニュースや動画のサムネイルはチチャリートであふれている。
その人気を最大限に利用しようと、クラブは2月8日に「The VIP Meet & Greet」というイベントを実施したのだが、はっきり言ってこれは不評だった。
30枚限定でチケットが売り出されたこのイベントの特典は以下の通り。
・チケット購入者だけがイベントに参加し、チチャリートに会うことができる
・チチャリートのサインが入ったLAギャラクシーのユニフォーム(Lサイズ)1枚
・記念撮影1枚(画像は1週間以内にメールで送られる)
これでお値段、なんと500ドル(約5万5000円)。ちなみに、チケット代はクラブの収益になるわけではなく、LAギャラクシー財団の活動資金として使われるという。つまり、これはチャリティーイベントである。
「チチャリートはメッシではない」
クラブのツイッターアカウントでイベント開催が告知されると、「500ドル? LAの街でチチャリートと遭遇するチャンスに賭けたほうがいい」「冗談だろ? チチャリートはメッシではない」「チャリティーとはいえ500ドルとは……」と、金額に対する批判的な声が殺到した。
イベント開催からすでに10日ほど経過しているものの、クラブやLAギャラクシー財団の公式サイトやSNSにそのレポートがアップされていないところを見ると、盛況ではなかったのかもしれない。
チチャリートは2月12日にアメリカの就労ビザを取得し、2月15日にはトロントFCとのプレシーズンマッチにキャプテンマークを巻いて先発出場し、新天地デビューを飾った。チームは1-2で敗れ、チチャリートもノーゴールに終わったが、後半には惜しいシュートを2本放つなど、今後に期待を持たせる部分もあった。
イベントは不評だったが、ピッチ上の実力でファンの信頼を獲得してほしいものである。
Photo: Getty Images
Profile
池田 敏明
長野県生まれ、埼玉県育ち。大学院でインカ帝国史を研究し、博士前期課程修了後に海外サッカー専門誌の編集者に。その後、独立してフリーランスのライター、エディター、スペイン語の翻訳家等として活動し、現在に至る。