2019年のFIFAクラブワールドカップは12月21日に決勝が行われ、リバプールが延長戦の末にフラメンゴを1-0と破って初優勝を飾った。その同日、決勝の前に行われた3位決定戦では、4度目の出場となるモンテレイがPK戦の末にアルヒラルを破って3位に輝いた。
大会の常連、またメキシコの強豪としての威厳を守ったモンテレイだが、彼らの2019年の戦いはこれで終わりではなかった。2019-20シーズンのリーガMX前期リーグで上位8チームによるリギージャ(プレーオフ)を勝ち進んでおり、帰国後にクラブ・アメリカとの決勝を戦ったのである。
モンテレイは11-12シーズン前期リーグでリギージャ進出を逃し、1カ月間も実戦から遠ざかった状態で2011年のクラブW杯に挑み準々決勝敗退を喫した苦い過去がある。今回のクラブW杯で好成績を収められたのは、メキシコ国内で直前まで真剣勝負を演じ、また大会後に大一番が待っていたことで、コンディション、モチベーションともに良好な状態を維持していたことと無関係ではないだろう。
第1戦は劇的逆転勝利
リギージャ決勝は12月26日、モンテレイの本拠地エスタディオBBVAで第1戦が行われた。5万3500人収容のスタジアムに集まった観衆は5万2929人。試合前には国歌斉唱が行われ、盛大に花火が打ち上がるなど、決勝にふさわしい雰囲気の中でキックオフを迎えた。
モンテレイは45分にOGで先制を許すも、前半アディショナルタイムにステファン・メディナがオフサイドギリギリのタイミングで抜け出してゴールを奪い、同点に追い付く。一度はVARで審議されたが、最終的にはゴールが認められた。
後半は何度か決定機を作ったが、クラブ・アメリカのGKギジェルモ・オチョアのビッグセーブ連発に遭う。しかしアディショナルタイム、ロヘリオ・フネス・モリがオーバーヘッドシュートを決め、劇的な逆転勝利を飾った。
PK戦の末、モンテレイが戴冠
第2戦は12月29日、クラブ・アメリカの本拠地エスタディオ・アステカで、7万人以上の観衆を集めて行われた。モンテレイは前半に2点を失い、2戦合計スコアで逆転されてしまったが、75分に相手DFのクリアミスの隙を突いてフネス・モリが2試合連続ゴールを奪い、2戦合計3-3の同点に追い付く。その後、延長戦でも決着が付かず、PK戦4-2で通算5度目の国内制覇を達成した。
優勝が決まった瞬間、アルゼンチン出身のアントニオ・モハメド監督はベンチで号泣した。彼は2006年、ドイツのフランクフルトで9歳の息子を交通事故で亡くすという悲劇を経験した。その息子はメキシコ生まれで、モンテレイの大ファンだったという。モハメド監督にとって、今回のタイトルは息子に捧げるものでもあった。
優勝の余韻に浸りたいところだが、後期リーグは2020年1月10日にスタートする。他のチームはすでに後期開幕に向けての態勢を整えており、モンテレイも早急に準備を進めなければならない。地元メディア『mediotiempo』では決勝の最中から人員整理の話題も出ており、ホナタン・ウレタビスカヤが最初の放出選手となり、ディエゴ・フォルランが監督に就任したペニャロールに移籍すると報じている。
Photo: Getty Images
Profile
池田 敏明
長野県生まれ、埼玉県育ち。大学院でインカ帝国史を研究し、博士前期課程修了後に海外サッカー専門誌の編集者に。その後、独立してフリーランスのライター、エディター、スペイン語の翻訳家等として活動し、現在に至る。