ヤニック・フェレイラ・カラスコ 24歳で渡った中国では「出色」
名優たちの“セカンドライフ”
欧州のトップリーグで輝かしい実績を残した名優たちが、新たな挑戦の場として欧州以外の地域へと旅立つケースが増えている。しかし、そのチャレンジの様子はなかなか伝わってこない。そんな彼らの、新天地での近況にスポットライトを当てる。
from CHINA
Yannick Ferreira CARRASCO
ヤニック・フェレイラ・カラスコ
「中国でプレーしているという事実は、“赤い悪魔”(ベルギー代表の愛称)の一員となることを妨げはしない。戦う舞台が違っても、才能というのは枯れないものなんだ」
今年9月、新天地でプレーし始めてから1年半が経過したカラスコは母国メディアのインタビューで、過去の選択に対する自信をこう示した。
彼がその選択を行ったのは、アトレティコ・マドリーでの3年目のシーズンを戦っている最中の2018年2月下旬のことだった。ベルギー代表MFは中国1部への昇格を前年に決めていた大連一方からオファーを受け取ると、これを“成長するチャンス”と捉え移籍を決断。この時から遡ること2シーズン、2015-16のCL決勝でゴールを決め、欧州トップリーグでチームの主力の1人として戦い続けていた24歳の中国移籍は、大きな驚きをサッカー界にもたらした。また、ロシアW杯開幕まで4カ月を切った段階でのアジア移籍という決断に、本大会メンバーからの落選の可能性を危ぶむ声が上がった。しかし、カラスコはそうした懸念に対し「欧州から離れるからといって、W杯に対する僕の意欲が下がっているわけではないんだ」と反論。こうして、彼の新たなチャレンジが始まった。
移籍が発表された数日後の3月初旬に中国リーグが開幕すると、合流したばかりのカラスコはさっそく先発フル出場を果たす。ところが、大連一方は上海上港相手に0-8という衝撃的な敗戦。ここから3試合連続の完封負けを喫し監督も解任と、最悪なスタートとなってしまった。しかし、この監督交代がカラスコにとって最初の転機となる。新しくやって来た元レアル・マドリー指揮官のベルント・シュスターは、CFの位置で起用されていたカラスコを得意の左サイドに配置転換。すると、監督交代後の最初の試合で移籍後初ゴールをマークしてみせたのだ。その後もチームはなかなか浮上できずにいたが、カラスコ自身は6試合で3ゴール2アシストと実力を発揮。移籍後もパフォーマンスが落ちていないことを示し、ベルギー代表の一員としてW杯に参加する権利を勝ち取ったのである。
パフォーマンスに陰りなし
ロシアW杯では4試合でプレーし、3位の栄誉を味わったカラスコ。しかし、中国に戻って来た彼を待ち受けていたのは熾烈な残留争いだった。チームは一時降格圏から脱出したものの、最終盤に再び調子を落として4連敗。そして、降格圏内の15位で最終節の長春亜泰戦を迎えた。この大一番で、残留へと導くプレーを見せる。先発出場したカラスコは、1点リードの64分にチームの2点目を記録。そのまま逃げ切り、5節ぶりの勝ち点3を獲得したチームは逆転での残留を達成したのだった。
その後、冬に欧州復帰の噂も流れたカラスコだったが、最終的にチームに残留。中国での2シーズン目は、今年6月にクラブとの間に不穏な空気が流れた場面もあったものの、ベルギー代表との両立の中で26試合17ゴールという出色の成績を残した。
ただ、中国での良好なパフォーマンスの一方で「欧州でのサッカーが恋しい」とたびたび発言しているカラスコ。現在26歳とまだまだ若いこのアタッカーには、これからどんな未来が待っているのだろうか。
Yannick Ferreira Carrasco
ヤニック・フェレイラ・カラスコ
(大連一方)
1993.9.4(26歳)180cm / 72kg MF BELGIUM
2012-15 Monaco (FRA)
2015-18 Atlético Madrid (ESP)
2018- Dalian Yifang (CHN)
Photo: Visual China Group via Getty Images
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Profile
小田 紘也
1989年、鹿児島県鹿児島市生まれ、神奈川県横浜市出身。慶應義塾大学経済学部卒。2012年からライター活動を開始し、同年にマドリッドでスペイン代表のEURO2012優勝の興奮を直に経験。スペイン語技能を生かしてスペインサッカーのニュースを“輸入”し、スペインリーグについてのデータサイトも運営している。趣味はギター演奏、ジャンルを問わない音楽鑑賞でビートルズについての造詣も深い。