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誰にも負けない「左45度」。中村敬斗、オランダの地で躍動

2019.08.14

G大阪から渡欧後、即デビュー、即ゴール、即MOM

 7月20日の名古屋戦をプレーしてから、中村敬斗はオランダに渡った。2週間後にオランダリーグ開幕を控えているトゥエンテにとっては、プレシーズンの最終段階に入っていた時期だ。

 選手層が薄いことから、中村にも出場機会が多く巡ってくるだろうが、それはオランダでの生活、オランダのサッカーにある程度慣れてからだろう――。そう思っていた私だったが、いきなり中村は開幕初戦の対PSV(8月3日。1-1)で先発に抜擢され、8分には左45度の位置から鮮やかな先制ゴールを決めた。左サイドで仕掛けたり、味方とのコンビネーションを見せたりした中村は71分でお役御免となってベンチに退いた。試合終了の笛が鳴ると、中村がマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたことが発表された。

 続く第2節の相手は、堂安律と板倉滉のいるフローニンゲンだった。この日、中村と対峙したのは、アヤックスのアカデミーで育ち、移籍先のフローニンゲンでの活躍でオランダ国内でも評価を高めているデヨファイシオ・ゼーファウクだった。跳躍力と瞬発力に加え、攻守にアグレッシブさが売りのU-21オランダ代表の右サイドバックだ。なかなか中村は前を向いてプレーすることができなかった。

 0-0で迎えた55分。中村が堂安と交錯し、トゥエンテにFKが与えられた。MFハビエル・エスピノーザが持ったボールを、強い意志を帯びた目で中村がもらいに行った。彼が蹴ったボールは低い弾道でフローニンゲンの壁を越し、左隅に決まった。GKセルヒオ・パットは一歩も動けなかった。

 フリーキックのキッカーは特に決まってなかったのだという。

 「練習でもやっていたので、蹴ったら入りました。イメージ通りのコースには行きました。ドライブをかける感じで打って入ったんでよかったです。感触もよかった。縦回転かけて落とすイメージでした」

 フローニンゲン戦はセットプレーからのゴール、PSV戦は流れの中からのゴールという違いはあるものの、共にペナルティーエリアのすぐ外、左45度からのシュートだった。

 「カットインしてシュートするのは、自分の得意な形。今日のFKも角度的には45度だった。壁を超えたら入るみたいな感じです。あの角度なら曲げて落として入れる練習をしてます。ドリブルとシュートが僕の武器なんです」

「英語が分からなくてもがんがん話しかけてます」

 ゼーファウクとのマッチアップでは「守備の対人がとても強かった。前半から足元でボールを受けるとかなり強く来るので正直やりづらかった」と中村も手こずっていた。むしろ、オランダ代表の右サイドバックを務めるPSVのデンゼル・ドゥムフリースと対人したときのほうが、中村のプレーは光っていた。

 「僕も(ドゥムフリースは良い右SBだと)聞いていて、『食いつきがすごいから気をつけろ』みたいな話をされました。『22番(ドゥムフリース)やべえ』と思ってたら、ドリブルでも抜けていたし、シュートも決めれたし、(自分の方が)上回っていたくらいだった。今日の42番(ゼーファウク)は対人がえげつないですよ。でも、彼を抜いてファウルをもらって、決められてよかったです」

 プレシーズンの終盤にトゥエンテと合流した割には、早くもチームに馴染んでいる印象がある。

 「コミュニケーションを取ったり、しゃべったりするのが好きなんで、英語が分からなくてもがんがん話しかけてます。チームの中心的な選手と仲良くなりました。自然と溶け込むみたいな感じでいこうかなと思っていて、初日からその感じでいけました。スペインの選手が4人くらいいて、すごい仲良くなりました。コミュニケーションに関してはとても取れてます。たまたま合っていたんでしょうね、僕が海外にフィットしたのがよかった。それが2試合連続(ゴール)につながりました」

 フローニンゲンに3-1で勝った後、サポーターに挨拶に行くと、延々と中村のチャントが歌われた。この日、個人チャントを贈られたのは中村敬斗ただ1人であった。


Photo: Getty Images

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トゥエンテ中村敬斗移籍

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中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。

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