名優たちの“セカンドライフ”
欧州のトップリーグで輝かしい実績を残した名優たちが、新たな挑戦の場として欧州以外の地域へと旅立つケースが増えている。しかし、そのチャレンジの様子はなかなか伝わってこない。そんな彼らの、新天地での近況にスポットライトを当てる。
from MEXICO
Joel CAMPBELL
ジョエル・キャンベル
スペースに抜け出す爆発的なスピードや、左足の強烈なシュートが持ち味。それほど大柄ではないが、ポストプレーも巧みにこなす。ジョエル・キャンベルは、かつて“コスタリカの宝石”と評され、将来を嘱望される存在だった。
2009年のU-17W杯に出場し、11年のCONCACAF U-20選手権では6ゴールで得点王に輝くと、すぐさまA代表に初招集。当時コスタリカを率いていたリカルド・ラ・ボルペ監督は、空き缶をボールに見立てて戯れるキャンベルの姿に感銘を受け、招集を決断したという。そして同年のCONCACAFゴールドカップでA代表デビューを飾ると、メキシコが招待出場したコパ・アメリカのボリビア戦で1ゴールを挙げ、その存在を世に知らしめる。欧州ビッグクラブによる争奪戦を制したのはアーセナル。11年8月19日、5年契約を結びロンドンの強豪の一員となった。しかし、イギリスでの労働許可が下りず。レンタルの日々が始まることとなる。
11-12はフランスのロリアン、翌12-13はスペインのベティスでプレー。ギリシャのオリンピアコスで過ごした13-14は32試合8ゴールの好成績を残すと、シーズン終了後のブラジルW杯では直前に負傷離脱したアルバロ・サボリオに代わってCFに入り、GSウルグアイ戦で得点をマーク。ベスト8進出の大躍進に貢献した。
この活躍により、14-15は晴れてアーセナルでプレーすることになったが、前半戦で10試合の出場にとどまり、15年1月にはスペインのビジャレアルへ。翌15-16は1年を通してアーセナルでプレーし公式戦30試合4得点を記録したが、結果的に彼がアーセナルの一員とした戦った最後のシーズンとなった。16W-17はポルトガルのスポルティング、17-18はベティスに2度目のレンタルで所属。同シーズン限りでアーセナルとの契約は満了を迎えた。
18年8月、イタリアのフロジノーネに加入し3年契約を結んだ。しかし、17試合ノーゴールと結果を残せず。1月下旬、メキシコのレオンに新天地を求めることとなった。18カ月間の期限付き移籍で、買い取りオプションも付けられている。
新天地での滑り出しは上々
第5節クルス・アスル戦で途中出場しメキシコデビューを飾ると、第6節クラブ・アメリカ戦からは2トップの一角で先発出場。この試合でチームの3点目をアシストし、続くトルーカ戦ではサイドからのクロス供給や中央からのスルーパスなど、多彩なプレーで勝利に貢献した。ハイパフォーマンスを見せるキャンベルに、恩師ラ・ボルペも「ジョエル・キャンベルがメキシコでプレーする姿を見られてうれしい」とツイートしている。
第8節プーマス戦では彼のスルーパスがPKを呼び込み、自らキッカーを務めることに。ついにメキシコ初ゴールかと思われたが、相手GKにブロックされ失敗。中継番組のコメンテーターやSNS上のファンから猛烈な批判を浴びてしまった。
それでも本人は「メキシコはスピーディーなダイレクトプレーが多い。チームメイトが快く受け入れてくれたので、すんなりと順応することができているよ」と手ごたえを感じている様子。クラブを転々としてきたためキャリアが長いように思われるが、まだ26歳。再興に期待したい。
Joel Campbell
ジョエル・キャンベル
(レオン)
1992.6.26(26歳) 178cm / 78kg FW COSTA RICA
2009-11 Saprissa
2011 Puntarenas on loan
2011-12 Lorient (FRA) on loan
2012-13 Betis (ESP) on loan
2013-14 Olympiacos (GRE) on loan
2014-15 Arsenal (ENG)
2015 Villarreal (ESP) on loan
2015-16 Arsenal (ENG)
2016-17 Sporting (POR) on loan
2017-18 Betis (ESP) on loan
2018 Frosinone (ITA)
2019- León (MEX) on loan
Photos: Getty Images
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Profile
池田 敏明
長野県生まれ、埼玉県育ち。大学院でインカ帝国史を研究し、博士前期課程修了後に海外サッカー専門誌の編集者に。その後、独立してフリーランスのライター、エディター、スペイン語の翻訳家等として活動し、現在に至る。