鹿島対レアル・マドリード再び。“経験を生かせる”またとない好機
FIFAクラブワールドカップUAE2018
欧州と南米の代表以外による史上初の世界制覇にあと一歩まで迫った決勝から2年。鹿島アントラーズとレアル・マドリードとの再戦が実現する。現行フォーマットでは最後となるFIFAクラブワールドカップ(FCWC)の歴史に、鹿島は新たな1ページを刻むことができるか。2年前の対戦やレアル・マドリードが抱える問題点を踏まえ、鹿島の“勝ち筋”を探る。
今回の対戦は鹿島アントラーズにとって、ひいては日本サッカー界にとっても非常に貴重な一戦ではないか。
現在の鹿島のメンバーの中には、レアル・マドリードとの前回対戦をピッチ上で経験している選手がMF永木、土居、遠藤、小笠原、DF昌子、山本、西、伊東、GK曽ケ端と9人もいる。さらに、前所属のシャルケ時代にCLの舞台でマルセロやクリスティアーノ・ロナウド(現ユベントス)とマッチアップしていたDF内田もいる。
世界のサッカー界をリードするメガクラブと日本のクラブチームとの真剣勝負において、過去の対戦経験を生かせる機会はほとんどない。だが、今回は違う。
一例を挙げると、前回は相当に苦しめられたFWカリム・ベンゼマの秀逸なオフ・ザ・ボールの動きを鹿島の選手たち、特に守備陣はどう封じるのか。
筆者は日本開催だった前回対戦を現地で取材したが、あの試合での背番号9のポストプレーは圧巻だった。抜群のタイミングでサイドや中央に生じたスペースに流れてパスを引き出すと、187cm/79kgの体躯を生かしボールをキープ。SBダニ・カルバハルやマルセロの攻め上がりを促しサイドを突破することもあれば、適切なポジションを取るルカ・モドリッチやトニ・クロースへと預けてゴール前へ顔を出しフィニッシュに絡む。
主役の座こそゴールデンボール(大会MVP)を受賞したロナウドやシルバーボールを手にしたモドリッチに譲ったが、チームの攻撃を活性化させるプレーはまさに世界最高峰CFのそれだった。
このほかにも、攻撃をオーガナイズするモドリッチとトニ・クロースの卓越したスキルと戦術眼に、一度スピードに乗せてしまえば手が付けられないギャレス・ベイル&ルーカス・バスケスの走力、CBコンビを組むセルヒオ・ラモスとラファエル・バランの対人守備能力――。
2年前、これら世界トップレベルのクオリティを肌で味わった鹿島の選手たちが経験を糧にどんな戦いを見せてくれるのか、楽しみで仕方ないのだ。
レアル・マドリードの欠陥
今回の試合を占ううえで大きなポイントとなるのは、レアル・マドリードの状態面であろう。サンティアゴ・ソラーリ監督下で9勝2敗と数字だけ見ればまずまずだが、先週のCLでCSKAモスクワ相手に完敗したようにパフォーマンスの質は満足いくレベルには達していない。
得点力不足については大黒柱だったロナウドの穴を埋め切れていないと言えばそれまでなのだが、それ以前の問題として現スカッドのポテンシャルを最大限に引き出せていないように映る。
指摘したいのが、右利きのルーカス・バスケスが右、左利きのベイル(orアセンシオ)が左サイドという配置と、アタッカーの特徴との相性の悪さ。昨季までのレアル・マドリードではカルバハルorマルセロ→ロナウドというホットラインが確立されていたが、ロナウドがいない現チームではクロスの有効性が低下。特にベイルがサイドをえぐった場合、高さで競り勝てるのはベンゼマくらいだが、にもかかわらずカットインできる逆足ウイングにしないのはなぜか、疑問符がつく。
また、こうした両ウイングの特性は、攻撃の組み立てにも問題を生じさせている。自陣からのビルドアップ時、両ウイングはサイドに開きボールを受けることが圧倒的に多い。しかし、彼らがサイドでボールを受けてしまうとSBの攻め上がりやベンゼマが自由にボールを引き出すことができない。結果、中盤中央に位置するモドリッチやクロースの卓越したパス能力までも生かせなくなっているのだ。
ゆえに鹿島としては、モドリッチやクロースらを警戒し早めに捕まえるのではなく、彼らのパスの出し先を封じることで、レアル・マドリードが抱える欠点を顕在化させたいところだ。
レアル・マドリードに不安が残るとはいえ、現大会フォーマットになってから欧州勢が準決勝で敗れたことはないのは事実。また、南米勢が準決勝で姿を消した例は昨夜のリーベルプレートを含め過去に4度あるが、2年前の鹿島もそうであったようにうち3度は開催国枠で出場したチームによるもの。ホームアドバンテージのない中東の地での一戦が困難なものであることは間違いない。歴史を変えることができるか、大きなチャレンジをぜひとも見届けてほしい。
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Photos: Getty Images
Profile
久保 佑一郎
1986年生まれ。愛媛県出身。友人の勧めで手に取った週刊footballistaに魅せられ、2010年南アフリカW杯後にアルバイトとして編集部の門を叩く。エディタースクールやライター歴はなく、footballistaで一から編集のイロハを学んだ。現在はweb副編集長を担当。