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無名の快速CBがトッテナムで夢を叶えるまで。「クライフイズムのDF」ファン・デ・フェンの物語

2023.10.22

横浜F・マリノスとセルティックを国内リーグ制覇に導いた優勝請負人アンジェ・ポステコグルーを新指揮官に迎え、2023-24シーズンのプレミアリーグで首位争いを牽引するトッテナム。イングランドでも猛威を振るう “アンジェ・ボール”を最終ラインから支えている新戦力こそ、今夏入団したばかりのミッキー・ファン・デ・フェンだ。4年前までは無名だったアヤックス産ではない「クライフイズムのDF」の知られざる物語を、彼の母国オランダで取材する中田徹氏に教えてもらおう。

 トッテナムが好調だ。10月7日、ルートンとのアウェイゲームを0-1で勝利した彼らはプレミアリーグ8節目にしてアーセナルと勝ち点20、得失点差+10で並び、得点数で上回って首位に立った。その決勝弾は、ミッキー・ファン・デ・フェン(22歳)にとって待望の加入後初ゴールだった。

 「チームとして、我われは本当に素晴らしいメンタリティを示しました。トッテナム・ホットスパーでプレミアリーグ初ゴールを決めることができてとてもうれしいです。そしてクリーンシート。DFとして最高の気分ですよ。冗談のようですが、スタジアムへ向かうバスの中、私に向かってソン(・フンミン)が『君は今日、初ゴールを決めるよ』と言てくれたのです。それが現実となりました」

 ボルフスブルクからトッテナムへの移籍が発表されたのは8月8日のこと。開幕戦の対ブレントフォード(8月13日/2-2)まで3度のチーム練習に参加しただけだったが、アンジェ・ポステコグルー新監督は若きCBのスタメン抜擢をためらわなかった。

 「私は彼を試合に出すことを待つことができたかもしれない。しかし、彼はうちのチームにとって本当にとてもいい選手であるという感触が、私にはありました。プレミアリーグでデビューするのが早ければ早いほど、彼はいい選手になっていくのです」(ポステコグルー)

加入発表前日にシャフタール・ドネツィク戦を現地観戦していたファン・デ・フェンは「新監督のアンジェから生まれたプレースタイルを見て本当に虜になったよ。攻撃的なサッカーで、まさに僕がやりたいことだ」と好感触をつかみ、「僕にはスピードがあるから攻撃的なサッカー、高いDFラインやライン間でも(問題なく)プレーできると思う。ボールを持っても落ち着きを払えると思うから、チームを助けられるといいね」とクラブ公式サイトのインタビューで意気込んでいた

 それから2カ月、ファン・デ・フェンはアルゼンチン代表のクリスティアン・ロメロと息のあったコンビを組み、“アンジェ・ボール”の代名詞であるハイラインを自慢の快速でカバーしながら6勝2分というポステコグルー体制の好スタートに貢献している。チーム内で唯一、公式戦全試合(リーグ戦8試合+リーグ杯1試合)でフル出場しているのも彼だ。

 7節リバプール戦ではコディ・ガクポにつき切れずゴールを許すなど、ファン・デ・フェンには荒削りなところがあるものの、最後尾でそのポテンシャルを目の当たりにしているGKグリエルモ・ビカーリオは「ミッキーが毎日成長しているのがわかります。彼と一緒にプレーできることにとても感謝しています」と褒め称え、かつてドイツの古豪、ハンブルガーSVとレバークーゼンでプレーしたソン主将は「彼のプレーを見るのは本当に楽しい。2人ともドイツ語を話すので、お互いのことをよく理解し合っています」と語る。

プレミアリーグ開幕節ブレントフォード戦の試合前練習でソンと対峙するファン・デ・フェン

クライフの遺志を継ぐ「チーム・ヨンク」との出会いが転機に

 プレミアリーグで順風満帆なスタートを切ったファン・デ・フェンは10月、EURO予選のフランス戦(●1-2)で途中出場しオランダ代表初キャップを記録した。しかし、フォーレンダムの年代別チームでプレーしていた時、彼はクラブから「フォーレンダムに君の未来はない。どこか他のチームに移ったほうがいい」と助言されていた。

 「ユースではストライカーから左ウイングへ、それからCBにコンバートされましたが、僕がトップチームに昇格できるとは思えませんでした。1年間、地元のアマチュアクラブ『フォルトゥナ・ウォルメルフェール』でプレーしてからプロに再挑戦することも考えました」(ファン・デ・フェン)

 春なのに浮かない気持ちの18歳は1年の浪人も覚悟してU-19チームでプレーしていた。そんな悩めるファン・デ・フェンを救ったのが『チーム・ヨンク』だった。……

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アンジェ・ポステコグループレミアリーグミッキー・ファン・デ・フェン

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中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。

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