今季からトッテナムを率いるアンジェ・ポステコグルー監督(58歳)の人気がうなぎのぼりだ。あの有名な英国人シンガーまでが彼に歌を捧げているのである。
話題になり、ついにご本人登場!
横浜F・マリノスとスコットランドのセルティックをリーグ優勝に導いたポステコグルーは、初挑戦となったプレミアリーグでも素晴らしい手腕を発揮している。絶対的エースだったイングランド代表FWハリー・ケインという得点源を失いながらも、攻撃的なスタイル、いわゆる“アンジェ・ボール”で結果を残しており、開幕3試合で勝ち点7を確保して上位につけているのだ。
プレミアリーグで監督を務める初のオーストラリア人となったポステコグルーのフットボールにサポーターも魅了されている。MFイブ・ビスマや新加入のMFジェイムズ・マディソンを中心に織りなす痛快な攻撃サッカーは既にファンの支持を得ており、スパーズの試合では「We’ve got our Tottenham back(俺たちのトッテナムが戻ってきた!)」というチャントがスタジアムに鳴り響いている。
そんな指揮官に名曲の替え歌を捧げるファンまで出てきた。その歌というのは、英国を代表するシンガーソングライターであるロビー・ウィリアムズ(49歳)の大ヒット曲『エンジェルズ』だ。
先日、スパーズサポーターのジェイムズ・ブラックさんが1997年のヒット曲『エンジェルズ』の替え歌を披露したところ、それがネット上でバズることに。内容はポステコグルーの“アンジェ・ボール”を称えるもので、誰もが一度は聴いたことのある名曲のサビの歌詞を「エンジェルズ」ではなく「ビッグ・アンジェ」に変えたもの。かなりの話題になったようで、アーティスト本人の耳にも入り、なんとロビー・ウィリアムズが自身の名バラードの替え歌をインスタグラムにて披露したのである!
こんな歌詞になっている。「その間もずっと……俺たちは自分たちの好きなプレーをする。ビッグ・アンジェ・ポステコグルーと共にね。正しいかどうかは分からない。でも“アンジェ・ボール”だぜ。だから、ポチェッティーノはお前たちにあげるよ。コンテもモウリーニョも、そしてクリスティアン・グロスもね。なぜなら、俺たちはどこに行こうが、ビッグ・アンジェを愛するからね!」
これまでもサッカーに関する替え歌は色々とあったが、この曲が秀逸なのは歴代の監督の名前を出したところだ。「ポチェッティーノ(現チェルシー監督)」や「モウリーニョ(現ローマ監督)」は上手くメロディーにマッチしている。そして就任わずか9カ月で1998年に解任されたクリスティアン・グロスの名前も出し、過去の汚点をあえて触れるところが素敵だ。
指揮官自身も記者会見で言及
この替え歌は英国メディアだけでなく、ポステコグルーの母国オーストラリアのメディアも取り上げて話題になっている。今季大活躍のMFマディソンも替え歌を気に入ったようで、SNSで動画をシェアした。そして肝心のポステコグルーも歌を耳にしたようで、今月1日に行われた記者会見でその話題になった。
すると、冗談を交えた受け答えで英国メディアからも好評な指揮官は「これまで受けた賛辞の中で最も皮肉で意味のないものだね!」と話し始めて記者の笑いを誘うと「トッテナムには信じられないほど素晴らしい監督がたくさんいた。そこにきて俺さ……」と前任者たちに気を使った。
そして少し真剣な表情になり「もちろんロビー・ウィリアムズのことは好きだし、彼は最高のエンターテイナーだ。うちのサポーターが作った替え歌を、彼が歌ってくれたんだよね。素晴らしいことさ」とウィリアムズに感謝を告げた。「でも、誉め言葉ではない替え歌も作られたりするんだ。この歌は受け入れるよ。ありがとう。気分よく会見場を後にできるよ!」と、いつものユーモアを忘れていなかった。
ちなみに、サッカー好きで有名なロビー・ウィリアムズはイングランド3部のポートベールのサポーターだが、今回の替え歌を熱唱したあとに「これで俺はスパーズなのかな?」とつぶやいたが果たして――。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。