『もえるバトレニ』発売記念企画 #4
5月31日刊行の『もえるバトレニ モドリッチと仲間たちの夢のカタール大冒険譚』は、W杯2大会連続でメダルを獲得した“バトレニ”(「炎の男たち」を意味するクロアチア代表の愛称)の強さの秘密、そして彼らを長年取材してきた長束恭行さんのクロアチア愛が詰まった渾身の一冊だ。発売を記念した書評連載の第4回は、ラトビアやウズベキスタン、ポーランドでプレーしていた当時(2011〜15年)に長束さんの取材を受け、それからの付き合いだという柴村直弥選手(市川SC)が、選手や指導者にも読んでほしい本書の見どころを綴ってくれた。
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昨年のカタールW杯、我らが日本代表は決勝トーナメント1回戦でクロアチア代表と対戦し、PK戦の末に惜しくも敗れた。まだ記憶に新しい方も多いのではないだろうか。
クロアチアを語る上でルカ・モドリッチの存在は欠かせないが、『もえるバトレニ』はモドリッチはもちろんのこと、その他の代表選手たちの知られざる物語、そして人口が特段多いわけでも身体能力に優れた人種であるわけでもないクロアチアから世界最高レベルのタレントが生まれ続ける背景やその具体的な育成術なども記されている、非常に内容の詰まった魅力的な作品である。
10年間クロアチアに住み、長年この国のサッカーを追い続けている著者、長束恭行氏だからこそ書ける本質的な一冊であり、後にも先にもこれ以上のクロアチアサッカー本はないと言っても過言ではないだろう。
私自身、中学生や高校生、大学生の頃は、どうやったらサッカーが上手くなるのか、プロになった選手はどのような練習をしていたのか、どのようなマインドだったのか、などと思いを巡らし、少しでもその時の自分のトレーニングや心構えに活かしたい、と考えてそのような本を読み漁った。
本書にはバトレニの面々が歩んだ少年時代からのストーリーが描かれ、世界で活躍する選手が成長を遂げていく様々なケースを知ることができる上、クロアチアの名門ディナモ・ザグレブの実際の育成手法などまで記載されている。当時の私が本屋でこの本を見かけたら間違いなく購入していたはずだ。
「空間と時間」と「意思決定」
「16歳の時点で『ルカ・モドリッチはディナモのトップチームに昇格する』と断言するのは当時の私ですら困難だった。線が細くて体が小さかったのは問題ない。しかしながら、彼の同世代には才能にあふれる選手が他にもたくさんいた。それだけに16歳の少年に『君は昇格しない』と述べるのは、私にとっても勇気が必要だった」……
Profile
柴村 直弥
1982年広島市生まれ。広島皆実高校で全国高校総体優勝し中央大学へ。アビスパ福岡でJリーグデビューした後、徳島ヴォルティスでは主将を務め、2011年にラトビアのFKヴェンツピルスへ移籍。リーグ及びカップ戦優勝を成し遂げ2冠を達成。UEFAヨーロッパリーグでは2回戦、3回戦の全4試合にフル出場した。ウズベキスタンの名門パフタコールへ移籍しACLにも出場。ポーランドのストミールを経て当時J1のヴァンフォーレ甲府へと移籍した。現在もプレーしつつ『DAZN』のJリーグ中継の解説なども行なっている。