オサスナはUEFAヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)の出場権を正式に剥奪されたが、バルセロナのUEFAチャンピオンズリーグ出場の方は認められることが濃厚となった。
「UEFAはマフィア」
前回(6月26日)のニュースで、UEFAの管理、倫理、懲戒委員会が「剥奪が妥当」との結論に達したことをお伝えしたが、それを受けて7月4日、UEFAはオサスナの不参加を正式発表した。
オサスナにはスポーツ仲裁裁判所(本部:スイス)に不服申し立てをする道が残されているが、8月7日のECLの組み合わせ抽選までに判決が下されないと意味がなく、時間切れの可能性が高い。
オサスナと言えば、牛追い祭りで有名なパンプローナがホームタウン。7月6日に始まった同祭にはオサスナの会長が招待され開幕を宣言したのだが、祝祭の広場は抗議の場に変わった。
市役所周辺の建物には「正義を!」「弱者には強くて、強者には弱い」などの垂れ幕が下がり、「UEFAはマフィア」というシャツを着た人たちもいた。
抗議の親善試合を開催するプランもある。同じくECLの出場権を剥奪されたサンマリノリーグのビルトゥスからのオファーが届いているのだ。
セフェリンとラポルタがトップ会談
一方バルセロナの方は、管理、倫理、懲戒委員会が「剥奪する理由はない」という調査結果に達したことをジョアン・ラポルタ会長が発表した。近日中にUEFAから参加OKの正式発表がされると見られる。
「ネグレイラ事件」(バルセロナが長期にわたって審判界のナンバー2に不透明な大金を渡し続けた事件)のことを、UEFAのアレクサンドル・セフェリン会長は「私が会長になって最も深刻なものの一つ」と形容したのが4月初め。この発言を受けて、剥奪濃厚と見られていたが、なぜ一転したのか?
その理由について、カタルーニャ発以外のスペインメディアは「セフェリンとラポルタのトップ会談がモノを言った」と観測している。その場でラポルタは、有罪が未確定のまま制裁を下すことはできないと説得し、セフェリンがこれを了承したとされる。
これも前回お伝えしたが、UEFAの懲罰規定には、刑の確定を待たず制裁を科すことが可能である旨が記されているが、この規定を今回は適用しなかったわけだ。
ネグレイラ事件の有罪・無罪が確定するには5年から8年かかると言われており、制裁の有無はそのタイミングで決まる。
もし、有罪→欧州カップ戦出場禁止となれば、バルセロナ側は“現執行部と無関係の事件での制裁は不当”と抗議するだろうが、今回オサスナの言い分が通らなかったことで、その理屈は通用しないことがわかった(はず)。
その時、UEFAが「弱者には強くて、強者には弱い」というのは誤りだと証明される(はずである)。
Photo: Getty Images
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。