J2へ降格した上に、FIFAから突き付けられた補強禁止処分。そこに新指揮官・横内昭展監督の招聘も重なる。2023年のジュビロ磐田は、Jリーグ史に類を見ないシーズンを過ごすことになるだろう。掲げた野望は「2026年のJ1リーグ制覇」。その礎を築くための1年を迎えるに当たり、彼らに求められることを、望まれることを、国内有数の“Jリーグ観察者”でもある北條聡が考える。
2023年シーズンは「理想の像へ近づくための基礎工事」
どうなるジュビロ、どうする昭展――。わずかな手がかりを基にその大枠を探っていくことが本稿のテーマになる。昨季のJ1リーグであえなく最下位に沈み、J2へ降格したクラブにとって、今季はJリーグ昇格30周年という節目のシーズン。出直しを図るには格好のタイミングと言っていい。
フロントも刷新された。昨年末に舵取り役となった浜浦幸光社長は「新しく生まれ変わったジュビロをお見せしたい」と意気込みを語る。肝心のビジョンを描くのは昨年9月に古巣へ戻った藤田俊哉スポーツダイレクター(SD)だ。まず、2026年のJ1リーグ制覇という野望を掲げ、目指すべきフットボールの像を打ち出した。
「アグレッシブで、創造性に富み、ボールを大事にして、見ている方々すべてに楽しんでもらえるようなチームをつくりたい」
実現の可否はどうあれ、これが新生ジュビロの出発点。すべての取り組みはそこからの逆算だ。今季はその第一歩。まずは理想の像へ近づくための基礎工事に取りかかることになる。事実、その任を託された横内昭展新監督も「チームの基盤をつくり直す」と宣言。その進捗状況を踏まえながら、目の前の現実との折り合いをつけていくマネジメントになりそうだ。
託された手綱。横内昭展監督と歩む再建への道
横内監督は御年55歳。1996年に指導者へ転じてから28年目を迎える。日本代表やサンフレッチェ広島で森保一監督にコーチとして仕えた実績は十分だが、監督業は初めてだ。そのうえ、逆風にもさらされた。FWファビアン・ゴンサレスの契約をめぐる不手際により、FIFA(国際サッカー連盟)から補強禁止処分が下され、戦力面における刷新も、特段の上積みもない。限られた人的リソースを使って、チームの再建を押し進めることになる。
ただ、横内監督も藤田SDも「十分に戦える戦力」と口をそろえた。確かに現有戦力の維持に成功したのはプラス要素だろう。降格に伴う人材流出で一気に弱体化が進む最悪の事態を回避できたからだ。フロントが力を尽くした賜物とも言えるが、磐田特有の事情が背景にあるのも確かだろう。端的に言えば、主力の高齢化である。他クラブの触手が伸びやすい20代前半の有望株はチームの主軸になり切っていない。
無論、プロの世界は実力至上主義。年齢に意味はないものの、伸びシロや持続可能性には概して大きな差がある。新たな環境や取り組みを受け入れる余白の大きさも同様だ。例外はあるにしても、再建はやはり一筋縄ではいくまい。
予想されるのは『ミシャ式』の実装か
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北條 聡
1968年生まれ。栃木県出身。早大政経学部卒。サッカー専門誌編集長を経て、2013年からフリーランスに。YouTubeチャンネル『蹴球メガネーズ』の一員として活動中。