スポーツ界には様々な“二刀流”がいるが、10月11日にインドで開幕したU-17女子ワールドカップにも、少し変わった二足の草鞋を履くプレーヤーが出場する。
今回のU-17女子W杯には、3大会ぶりの頂点を目指すU-17日本女子代表に期待が寄せられるが、他にも注目すべきチームがいる。それが同世代で初優勝を目指すU-17アメリカ女子代表だ。
雪上でも屈指の実力者
女子サッカー界の“絶対女王”と呼んでも過言ではないアメリカだが、実はU-17世代では成績が振るわない。女子のA代表は女子W杯とオリンピックを4回ずつ制しており、U-20代表も今年8月のU-20女子W杯では日本に敗れてグループステージ敗退を余儀なくされたが、それでも3回は優勝している。だが、U-17女子代表は優勝できていないどころか、近年は全く好成績を残せていない。第1回大会に準優勝してからは、一度もグループステージを突破できていないのである。
だが、今回は優勝候補の一角に挙げて良いだろう。北中米カリブ海予選では全勝で優勝。しかも7試合で「58得点1失点」という破壊力を示した。先日、ドバイで行われた日本との親善試合にも2-1で勝利しており、本大会に向けて順調な仕上がりを見せている。
そんなアメリカには楽しみな選手がいる。それが「スキー板」と「スパイク」という二足の草鞋を履くMFサマンサ・スミス(17歳)だ。スミスはサッカーだけでなく、ウィンタースポーツも得意としており、クロスカントリースキー界でも有望視されるアスリートなのだ。今年2月にノルウェーで開催された「ノルディックスキージュニア世界選手権」では、クロスカントリースキーの15kmで11位、スプリント種目では5位に入った。その結果により、米国のスキー&スノーボード代表チームに選出されたという。
本人は「スキーとサッカーは別物。だからこそ、両方のスポーツでアメリカ代表になれたのは誇らしい」と語るが、両立するのは容易ではない。スキーシーズンに体を酷使してケガを負ったこともあり、今年4月のU-17女子W杯予選は欠場した。それでもスミスは「どちらも好きなので、できる限り両方とも続けたい」と話しており、コンディションを回復させてW杯メンバーに選ばれた。
特別な想いを抱える選手も
そんなアメリカ代表で、誰よりも特別な想いで今大会を迎えるのは背番号10を背負うMFミア・ブータ(16歳)だろう。というのも、ブータの父親はインド出身なのだ。アメリカ女子代表で、インド系アメリカ人が女子W杯に出場するのは初めてのことになるそうだ。しかもブータは、父の祖国で開催される女子W杯の舞台に立ち、10日の開幕戦でいきなりインドと対戦するのだ。
年末に17歳の誕生日を迎えるブータは学業にも力を入れており、同世代の子たちより1年早く高校を卒業。来年1月に一足早く名門スタンフォード大学に入学することが決まっている。もちろんサッカーの道を進む予定だが、神経科学などの分野にも興味があるという。
このように、様々な夢やバックグラウンドを抱えた選手たちがインドに集結する。U-17女子W杯では、“リトルなでしこ”の活躍とともに、他のチームにも注目したい。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。