優勝争いと残留争いが最終節までもつれ込み、例年以上に盛り上がった今季のセリエAは、ミランの11年ぶりのスクデットで幕を閉じた。名門復活の兆しに沸くミラン、僅差で連覇を逃し雪辱を誓うインテルに次いで、3位でシーズンを終えたのがナポリだ。マラドーナ在籍時以来のスクデットも期待された1年を、数値と感情の両面から総括したい。
数値での評価「望外の3位」
リーグ戦での成績は24勝7分7敗の勝ち点79。首位との差は7ポイントであった。得失点は74得点31失点。失点数はミランと並んでのリーグ最少である。「最少失点ならリーグ優勝の法則」と題した記事を昨年11月に寄稿させていただいたが、期待していた形とはやや違うものの、ジンクス通りの結果となった。失点の少なさは優勝の必要条件であり、十分条件ではなかったということだ。
観客のいないスタジアムに響く、ジェンナーロ・ガットゥーゾ監督の絶叫がすでに懐かしい。2020-21シーズンは、86得点41失点で24勝5分9敗、勝ち点77の5位。数字を単純に並べてみると、得失点差でも勝ち点でも、さほど違いがない。しかしその結果としての順位は、経済的な意味で言えば、文字通り雲泥の差だ。CL出場権を得られる3位とEL出場となる5位。上位の顔ぶれがあまり変わらない中、アタランタ(昨季3位、今季8位)の成績不振にも助けられた上位入賞であった。「伸びなかった成績に比して、得られた結果は昨季と比べようもない」と言うべきか。
似たような成績ではあったものの、実際にシーズンを通して受けた印象は昨季とかなり違う。今季のナポリのイメージは「上位とは善戦するのに下位になぜか負ける」「いつもホームで負けている」。気のせいだろうか。数字を見てみよう。
今季敗戦した相手は、インテル(アウェイ)、アタランタ(ホーム)、エンポリ(ホーム&アウェイ)、スペツィア(ホーム)、ミラン(ホーム)、フィオレンティーナ(ホーム)である。最終順位14位エンポリに2タテを食らう、同16位スペツィアにホームで負けるというあたりが衝撃的である。それなのにCL圏内に入れてしまうのが、“魔境”セリエAの魅力であると言い切ってしまいたい。
ちなみにホームでのスペツィア戦は相手セットプレーからのオウンゴールで敗北し「被枠内シュート数ゼロで負ける」という大変に不名誉な記録を賜ってしまった。さらに7敗のうち実に5試合がホーム、ディエゴ・アルマンド・マラドーナ・スタジアムである。天に召されたディエゴも苦々しい顔をしているに違いない。
上位陣との対戦成績でもホームとアウェイの差が出てしまった。上位7チームから自チームを抜いた6チームとの対戦成績は、ホームで2勝2分2敗(平均勝ち点1.33)。だがアウェイでは3勝2分1敗(平均勝ち点1.83)である。せっかくパンデミックによる入場制限が緩和され、ファンがスタジアムに集まったというのに残念でならない。あるいは2年ぶりに満員のスタジアムでプレーすることが、逆にプレッシャーとなってしまったのかもしれないが。
感情的な評価「逃した魚は大きい」
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Profile
大田 達郎
1986年生まれ、福岡県出身。博士(理学)。生命情報科学分野の研究者。前十字靭帯両膝断裂クラブ会員。仕事中はユベントスファンとも仲良くしている。好きなピッツァはピッツァフリッタ。Twitter:@iNut