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キーワードは「ロングボール」。良さを消し合ったフランクフルトとレンジャースの激闘を分析【EL決勝レビュー】

2022.05.22

過去10シーズンにわたりスペイン勢とイングランド勢が独占してきたELのタイトルだが、新フォーマット初年度となった2021-22はドイツのフランクフルト対スコットランドのレンジャーズの顔合わせとなった。PK戦の末にフランクフルトが優勝を遂げることとなった一戦を、戦術的に振り返る。

 ストライカーとしてチームを牽引したCFラファエル・サントス・ボレが5人目のPKキッカーとしてゴールネットを揺らした瞬間、決戦の舞台となったセビージャの地は歓喜に包まれた。

 フランクフルト対レンジャーズという、予想外の躍進を果たした2チームによる対戦となった2021-22のEL決勝。鎌田大地と長谷部誠の2人の日本人選手が所属するフランクフルトは、リーグ戦では中位にとどまる一方、ELの舞台ではベティス、バルセロナ、ウェストハムと並みいる強豪を撃破しファイナルへと駒を進めた。レンジャーズとの対戦は、90分では決着がつかずPK戦までもつれこむ大激戦に。長谷部誠はビハインドの後半から出場、鎌田大地はフル出場を果たしフランクフルトの戴冠に貢献した。

 この試合はともに持ち味を発揮しつつも殺しあう好ゲームとなった。特に、両チームの守備陣の奮闘とロングボールにおける攻防は目を見張るものがあった。日本人選手のEL制覇、フランクフルトにとっては42年ぶりというエモーショナルな部分は一度置いておき、戦術的な視点でこの試合のポイントを分析する。

両チームの戦術的特徴

 フランクフルトの最大の特徴は、[5-2-3]で高い位置に敷く守備ブロックである。前線3枚が大外へのプレッシングを行えるハーフスペースに位置し、3人の間を狙うパスを守備力と運動量に長ける2セントラルハーフ(CH)が刈り取り速攻を繰り出す守備戦術は、躍進における最重要ポイントとなった。決勝においてもこの守備が機能し、優位に試合を進めることとなる。

 対するレンジャーズは、試合に応じて高さとシステム([5-2-1-2]や[4-2-3-1]など)を変えた守備ブロックを用いて勝ち進んできた。強豪相手であれば無理して繋ぐことはせずにロングボールを選択し、アタッカーのライアン・ケントやジョー・アリボといった打開力のある選手が攻撃に変化を作り出す。

 そんな両チームの対戦は終始、守備陣の奮闘により攻撃陣の良さが消される形で進み、ロングボールが多くなった。ここでは、試合の展開に強く影響した両チームの守備戦術とロングボールにフォーカスしていく。

 優勢だったのはフランクフルトだ。この試合のフランクフルトは、守備とビルドアップの大黒柱であるCBのマルティン・ヒンターエッガーが負傷欠場。鋭いくさびを打ち込める彼の不在、そしてレンジャーズの守備ブロックを考慮し、リスクの少ないロングボールによる攻撃の展開が増えた。

ピッチ全面でセカンドボール回収に成功したフランクフルト

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UEFAヨーロッパリーグフランクフルトレンジャーズ

Profile

とんとん

1993年生まれ、長野県在住。愛するクラブはボルシアMG。当時の監督ルシアン・ファブレのサッカーに魅了され戦術の奥深さの虜に。以降は海外の戦術文献を読み漁り知見を広げ、Twitter( @sabaku1132 )でアウトプット。最近開設した戦術分析ブログ~鳥の眼~では、ブンデスリーガや戦術的に強い特徴を持つチームを中心にマッチレビューや組織分析を行う、戦術分析ブロガー。

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