ファジアーノ岡山・田中雄大の武器を磨いたサッカー人生。“先輩”小川航基を見て感じた差とは
明治安田生命Jリーグが開幕して2ヶ月強が経過したが、今季も各クラブの大卒選手が活躍している。特にJ2でそれは顕著で、代表的な選手としてファジアーノ岡山の田中雄大が挙げられる。早稲田大学を卒業したOMFは同期の本山遥(関西学院大卒)と共に開幕スタメンを奪取し、その試合でプロ初ゴールとなる勝ち越し点も記録した。中学時代からの武器である中盤でギアを上げるドリブルはプロの舞台でも健在だ。7節からはベンチスタートも増えだしたものの、全試合に出場しており、主力の座を掴んだと言って良い。
FC多摩(中学)時代にU-15日本代表経験もあり、桐光学園(高校)時代は小川航基やイサカゼイン(共に横浜FC)、茂木秀(水戸ホーリーホック)や鳥海芳樹(ヴァンフォーレ甲府)ら豪華な先輩たちがいるなか1年生から主力となった。しかし、高卒でのプロ入りは叶わず早稲田大学へ進学し、ファジアーノ岡山内定を勝ち取った。
もう一度日の丸を背負いたい
――開幕スタメンを勝ち取り、その試合でプロ初ゴールも決めました。幸先良いスタートを切れたのかなと思っています。
「開幕戦では結果も出せて満足できましたが、最近はチャンスに絡んでいくシーンが少ないと思っています。僕は前でプレーをする選手なので、結果をどれだけ出せるかが高みを目指す上でも重要になってきます。もっと結果にこだわって貪欲にやりたいですね。開幕スタメンに関しては、キャンプの時から目指してはいましたし、手応えもありました。プロになった以上は年齢も関係ないし、日々のトレーニングが物を言うので。そういう点では得点も取れてよかったと思います。ただ、そこから継続できていないのは課題です」
――得点の部分やアシストにこだわりたいと。
「そこが評価にも繋がってくると思いますし、世界の舞台や代表を目指すには、結果が必要だと思うので。ここには強い思いを持っています」
――一度、U-15の日本代表にも入っていますよね。それゆえ、もう一度その舞台に立ちたい思いが強いのかなと。
「サッカー選手である以上は目指すべき場所だと思います。高校・大学で対戦した選手が代表でプレーをしているので、届かない場所ではないとも思っています。でも、そのためには結果を出し、常に好パフォーマンスを出し続けることが必要。大卒でプロになっている以上、若くはありませんし、日々のトレーニングで高い意識を持ってやらないとそこにはたどり着けません。より自分にもプレッシャーをかけていきたいですね」
――岡山に入った経緯を教えてもらえますか?
「スカウトの中島健太さんが、自分が大学3年生の時に声をかけてくれたんです。関東リーグの試合に出た翌日に、2部の試合の審判で流経大のグラウンドへ行った時でした。ピッチ内だけではなく、こうやってピッチ外の面でチームに貢献したいという思いを持っていた中で、その姿勢をすごく評価していただいたんです。そこは自分としても大学生活のテーマとして持っていて、大学を経てプロになる意味みを自ら示せたのかなと。
声をかけてもらってから練習参加もしたのですが、その後に怪我をしてしまい、岡山のキャンプや他のチームの練習参加にも行けなかったんです。復帰する前に岡山からオファーをいただいたのですが、もう少しチャレンジしたい思いがあって、少し待ってもらいました。でもその後に自分の持っている力を100%出せる試合も少なくて、他のチームからも声はかからず。それでもずっとオファーの返答を岡山は待ってくれたので、ここに行こうと決心しました」
FC多摩時代に武器を確立
――中盤で一枚相手を剥がして前進するプレーは田中選手の武器ですが、それも評価されたのかなと。これは昔から変わらない武器というイメージがあります。
「自分のサッカー人生でもFC多摩で過ごした中学時代がターニングポイントでした。そこでプレースタイルが確立されました。その3年間に加えて、高校も大学も良い進路選択ができたと思います。中盤で1人を置いていければ、自分のスピードに乗っていけるという感覚を得たのがFC多摩時代でした。相手の逆をとるターンとか、一瞬で置いていく、1つ仕掛けてゴールを目指す、という部分は身についたと思います」
――田中選手の持ち運びは、スピード感があります。ただ、素走りが早いわけではない。
「初速はちょっと速いと思うのですが、相手の逆を取っている分、速く見えるという部分があるのかなと」
――逆を取るプレーで参考にした選手はいましたか?……
Profile
竹中 玲央奈
“現場主義”を貫く1989年生まれのロンドン世代。大学在学時に風間八宏率いる筑波大学に魅せられ取材活動を開始。2012年から2016年までサッカー専門誌『エル・ゴラッソ 』で湘南と川崎Fを担当し、以後は大学サッカーを中心に中学、高校、女子と幅広い現場に足を運ぶ。㈱Link Sports スポーツデジタルマーケティング部部長。複数の自社メディアや外部スポーツコンテンツ・広告の制作にも携わる。愛するクラブはヴェルダー・ブレーメン。