15歳にして国際大会で大活躍。ブラジルの新たな至宝エンドリッキ
ブラジルの新たな至宝が、U-16ブラジル代表として世界の舞台で輝きを放った。4月12日から18日にかけて開催されたU-16モンテギュー国際大会で、5ゴールを決めて得点王に輝き、さらに大会MVPも獲得したFWエンドリッキ(パルメイラス)だ。
エンドリッキはすでにリバプールやマンチェスター・シティが担当者を送り込み、1年に渡って成長を追っている選手。
今年1月のコパ・サンパウロ・ジュニオーレスでは、U-20の大会に15歳で出場。5試合に出場して6ゴールを決め、大会MVPも獲得する活躍で、パルメイラスの初優勝に貢献した。それにより、バルセロナやレアル・マドリー、パリ・サンジェルマンをはじめとするヨーロッパの他のビッグクラブからも注目を集めることになった。
そのエンドリッキがブラジル代表として初めて参加した大会が、U-16モンテギュー国際大会だったのだ。
有言実行の見事な優勝
そのレベルの高さにより国際的に有名なこの大会には、今年もFIFAランキング上位10カ国の中から8カ国(ヨーロッパ5カ国、南米3カ国)が参加。ブラジルは、来年のU-17南米選手権とU-17ワールドカップに向けた重要なチーム作りの機会と捉え、2月に就任したばかりのフィリッピ・レアウ監督とともに国内合宿を経て臨んだ。
その結果、3勝1分(メキシコ戦4-0、オランダ戦2-2、イングランド戦3-0、アルゼンチン戦2-1)で38年ぶりの優勝。エンドリッキはその全4試合で得点、ペドリーニョ(コリンチャンス)、同じパルメイラスのルイス・ギリェルメとのトリオを中心に縦横無尽な動きを見せ、アシストでも貢献した。
フランス入りした最初の練習日、日頃の発言から謙虚さがうかがえるエンドリッキが、今回は早々と優勝宣言をしていた。
「この大会でブラジルが長年優勝していないのはわかっているけど、このチームが優勝で終えられると信じている」。いつにない強気の発言の理由はこうだ。
「僕らのチームはすごく結束が固いし、ピッチの中での良いコンビネーションもできている。それに、このカナリア色のユニフォームを着るという、言葉にできないような経験をしているんだから」
初戦の前には、ロッカールームで輪になり、チームメイトたちに「落ち着いていこう。ここには他より強いチームもなければ、他より弱いチームもないはずだ」と語りかけていた。
あらゆる特徴を存分に発揮
この大会でのブラジル第1号ゴールを決めたのもエンドリッキだった。グループリーグ第1節メキシコ戦の開始4分、ペドリ―ニョのシュートを相手GKが弾いたところを瞬時に蹴り込んだ。
第2節オランダ戦では、先制点を奪われた後、冷静にPKを決めた。再び1点を追う展開となった際には、スルーパスを受けてドリブルでゴール前に運びながら、相手DFの体当たりにも安定感を保ち、スピードに乗ったままシュートに持ち込み、同点ゴールを決めた。
2試合を経験した後、彼は語っていた。
「代表チーム同士の対戦は、レベルが違うということを実感している。ブラジル代表のユニフォームを着てプレーすることにまだ緊張感があるし、他の国だって、僕らがいつもテレビで見慣れている強豪ばかりだ。だからこそ、地に足をつけてプレーすることが大事だと思う」
第3節イングランド戦では、ドリブルで3人をかわした後、ペナルティーエリアの外からのミドルシュートを鮮やかに決め、地元のフランス人で埋まったスタンドから喝采を浴びた。
さらに決勝アルゼンチン戦では、開始1分にチームメイトがアルゼンチンからボールを奪ったと見るや走り出し、パスを受けながらスピードに乗ってディフェンスラインを突破、GKとの1対1になると、思い切り蹴り込んでゴールを決めた。
その他にも、オーバーヘッドキックなど惜しいプレーも含めて様々なパターンのシュートを大会中に披露し、彼の技術やスピード、安定感など、現時点で持ち得るあらゆる特徴を存分に発揮した。
「いつかフル代表に」
チームメイトたちとふざけ合ったり、みんなでサンバを歌って盛り上がったりする時は、15歳の年齢よりも幼くさえ見えるが、カメラの前に立つと落ち着き払い、大人のような言葉が出てくる。優勝の歓喜でチーム全員とはしゃいだ後も、こう語っていた。
「ブラジル代表としての初めての大会で、僕の人生でも期待していた以上の、説明できないようなことが起こった。でも、重要なのはさらに謙虚になることだ。優勝は、チーム全員でそうやって頑張ってきた結果なんだ。個人賞の獲得も、チームが手助けしてくれたからこそ。彼らと一緒でなければ、僕は何もできなかっただろう。すごく感謝している」
ただし、夢を語る時には素朴な笑顔に戻った。
「大事なのはブラジル代表の勝利。誰が得点するか、アシストするかに関わらずね。でも、このユニフォームを着てゴールを決める、その味わいは格別だよね。これからももっと決めたいし、それができることを期待しながら、自分のプレーをもっと高めていきたい。そして、いつかフル代表に到達することを目標に頑張っていきたい」
帰国したエンドリッキを待っていたのは、ブラジル国民のさらに高まる期待感だ。7月に16歳になる彼を、パルメイラスですぐにプロの試合を経験させるのが良いか、U-20でもう少し成熟させるのが良いのか――メディアもサポーターも議論を楽しんでいる。
Photos: Bruno Pacheco/CBF, Julien Zajac/CBF, Laurent Foreau/CBF
Profile
藤原 清美
2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。