筑波大学蹴球部データ班が解説!清水エスパルス・山原怜音の魅力とは
2022年シーズン、筑波大学から清水エスパルスに加入した山原怜音。大学サッカーの地域別対抗戦デンソーカップの2021年大会でMVPに選出されるなど、今年からJリーグに挑戦する大卒1年目選手の中でも注目の逸材である。そんな山原の魅力を、後輩にあたる筑波大学蹴球部データ班所属の金侑輝氏と梨本健斗氏が大学時代のデータを用いて解説する。
SBから試合を作る司令塔
まずは読者のみなさんに山原の凄さ知ってもうらために、こちらのプレー映像をご視聴いただきたい。
いかがだっただろうか。この映像だけでも十分にスペシャルな選手だと感じてもらえたのではないかと思うが、ここからは大学時代のデータを用いながら山原のどこが優れているのか深掘りしていく。
現代サッカーにおいてSBに与えられる役割は非常に多岐に渡っている。山原も同様に多彩な役割をそつなくこなし、両サイドのSBにくわえてサイドハーフとしてもプレーできる。そんな彼の凄さの1つがサッカーIQの高さと正確な技術で試合を組み立てることができる点だ。大学時代の試合データを見ると山原がいかに筑波大の攻撃の起点になっていたかがわかる。データを交えてその特徴を解説していきたい。
最初に見ていくのは、ビルドアップに関するデータ“Pass Into Attacking Third”という指標だ。これはある選手がどれだけAttacking Third(ピッチを水平方向に3等分した時、最も敵陣に近いエリア)に侵入するパスを出せたかを示すもので、山原はスタメン出場した2021年度関東大学サッカリーグ戦15試合すべてでチーム1位の数値を記録している。SBとして出場することが多かった中、、賢いポジショニングと確かな足下の技術を駆使してサイドというパスコースの限定されたエリアからボールを前進させてきた。彼がチームのビルドアップの中心となっていたかがわかるだろう。
次に初回するのは、footballistaでも何度か取り上げられている「パッキング・レート」という指標だ。これはサッカーの前進に関わるプレーを評価するデータで、前方向のパスに対して「1本のパスで何人の相手選手を通過することができたか」「受け手の身体の向き」に基づきポイントを加算し、どれだけ効果的にボールを前進させることができたかを評価するものである。エリアごとにポイントの加算率に傾斜をつけることで、よりゴールに直結するプレーほど数値が高くなる仕組みになっており、筑波大学蹴球部データ班ではドイツで生まれたこの指標をパフォーマンス分析に導入している。
山原がスタメンで出場したリーグ戦における、パスの出し手としての「パッキング・レート」の平均値は26.9。昨季、リーグ戦におけるチーム全体の「パッキング・レート」の平均値は119.3であり、山原1人でチームの22.5%の数値を記録している。もちろん、この数字はチーム1位であり、筑波大の攻撃において欠かせない存在であったことを示している。
攻撃の仕上げもこなす仕事人
ここまで、山原がボールを前進させる能力に長けた選手であることをデータから説明してきた。ただ、彼の魅力は組み立ての能力だけはない。敵陣深いエリアでも仕事が出来ることも強みの1つである。……