【EURO2020カウントダウン企画】強豪国の戦力分析#9ポルトガル代表
6月11日に開幕するEURO2020。そのカウントダウン企画として、各国に精通するジャーナリストが強豪国の戦力分析&最新情報をお届けする。第9回は、前回王者のポルトガル。堅守で大会を制した前回のチームよりも、さらに総合的な戦力は向上している。
EURO2020に向けたポルトガル代表メンバーが発表されたのは5月20日のこと。フェルナンド・サントス監督の選んだ26人のリストを見て、最初の驚きはCBが3人しか招集されていないことだった。
「CB3人」の謎
しかも、ルベン・ディアスを除く2人は35歳を超える大ベテラン。新型コロナウイルスの影響が無視できない中、選手登録枠が23人から26人に拡大されているにもかかわらず、本職のCBが3人というのは心もとない。
この懸念に対するサントス監督の説明は「ダニーロ・ペレイラ、ジョアン・パリーニャ、ウィリアム・カルバーリョの3人が必要に応じてCBの役割を果たせるかどうか」という、やや煮え切らないものだった。
前日にアシスタントコーチとともに8時間かけて26人を選んだ。「最初は31人の選手が候補にいて、そこから23人を選び、汎用性の観点からさらに3人を追加した」と指揮官は語る。
おそらく最後に滑り込んだのはパリーニャ、ゴンサロ・ゲデス、そしてペドロ・ゴンサウベス(通称:ポテ)の3人だ。中盤アンカーと非常時はCBでも起用されるであろうパリーニャ、ウイングを中心に前線のすべてのポジションを務められるゲデス、国内リーグで得点王に輝いた2列目が主戦場のポテ。確かにいずれも汎用性のある選手たちだ。
サントス監督は当然、大会前あるいは大会期間中に負傷者や新型コロナウイルスで離脱者が出る可能性を考慮しているはず。その時、ディフェンスの人数が足りなくなるより、チームの長所である攻撃陣の駒が足りなくなるリスクの方が大会を勝ち抜く上で大きくなると判断したのだろう。
だが、これは一種の「賭け」にしか思えない。CBの4番手候補に挙げられた3選手は、所属クラブで基本的にセントラルMFとして起用されてきた。ダニーロは今季加入したパリSGで数試合CBとして起用されたが、緊急事態に対処するためのもので本格的なコンバートではない。最後にCBとして1シーズン戦ったのは、オランダのローダに所属していた12-13シーズン。ほぼ10年前のことだ。……
Profile
舩木 渉
1994年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学スポーツ科学部卒業。大学1年次から取材・執筆を開始し、現在はフリーランスとして活動する。世界20カ国以上での取材を経験し、単なるスポーツにとどまらないサッカーの力を世間に伝えるべく、Jリーグや日本代表を中心に海外のマイナーリーグまで幅広くカバーする。