3月16日、ベルギーのプロリーグ機構は定例会議を行い、1部・2部に所属する全25のクラブが、オランダとの合併リーグ「BeNeリーグ」構想に全会一致の賛成票が投じられた。
ベルギーのクラブにはメリット多数
10年以上に渡り、繰り返し議論が行われている「BeNeリーグ」構想。アンデルレヒトやスタンダール・リエージュなど、ベルギーリーグのトップクラスのクラブが、ベルギー・オランダ両国の競技レベル向上、クラブのブランド向上を求めて、頻繁に賛同を呼びかけていた。
欧州5大リーグに匹敵するブランド価値が生まれ、ハイレベルな試合と莫大な収益を得られる期待が大きい一方で、リーグ合併による降格は当事者クラブの経営難に直結するとされ、過去にはリーグ中位クラスのクラブからは反対意見が挙がっていた。2021年になり、ようやく全会一致の賛同を得られることになった。
外国資本によるクラブ買収が相次ぎ、1部リーグの過半数以上のクラブが外国資本になった今では、過去に懸念表明をしていたクラブにも大きな後ろ盾があり、降格による一時的な経営危機を免れることができると見られている。そして、2部リーグは8チームの少数で行われているため、オランダとの新リーグ創設へスムーズに移行できる状況でもある。
近年の財政難によって国内での競争力が低下しているアンデルレヒトやスタンダール・リエージュといった名門クラブにとって、リーグの合併は悲願だ。外国資本が次々と参入し、野心に満ちたベルギーの各クラブは、1年でも早い合併を望んでいることだろう。
一方オランダでは…
リーグ合併に関して積極的な姿勢を見せるベルギーに対して、オランダサッカー協会(KNVB)は反応を見せていない。2019年にリーグ合併の可能性を探るべく調査をするという声明は発表されたが、以降オランダサイドから声明はなく、大きな動きを見せていない。
サッカー以外の競技では、バスケットボール、アイスホッケー、ハンドボールなどでベルギー・オランダの国をまたぐリーグが行われている。女子サッカーは2012年から3シーズン行われていた。
一方で、昨年5月にはオランダ北部に本拠を構えるヘーレンフェーンのスポーツディレクター、ケース・ローゼモンド氏が「我われにとって、シャルルロワにアウェイ遠征するのはスカンジナビアに行くのと変わらない」と発言した。
リーグ合併が実現した場合、ヘーレンフェーンやフローニンゲンなどオランダ北部のクラブはベルギー南部までの遠征を強いられ、これまでの2倍の距離を往復しなければならない。両国のそれぞれのリーグは国土の小ささゆえにコンパクトで、遠征費用と疲労を抑えられるメリットはあったが、合併リーグでは状況が一変するだろう。
ベルギーからは全会一致で合併案が賛成されたが、外国人投資家が参入するベルギーに対し、オランダは年間予算が1000万ユーロ(約13億円)に及ばない小クラブが1部に参戦しており、2部も8クラブのベルギーに対して20クラブと、合併を実現させるにはまだまだギャップが大きい。積極的に合併を進めようとするベルギーだが、議論が進展するにはオランダ側の反応が待たれるところだ。
Photo: Getty Images
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シェフケンゴ
ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。