先鋭的なサッカーでJ2の中で特異な存在感を発揮しているレノファ山口だが、霜田体制3年目は屈辱の最下位に終わった。育ててもすぐに引き抜かれるのが今のJ2の実情であり、求められるのは即効性のある結果だ。そこでクラブが白羽の矢を立てたのは、ベガルタ仙台を躍進させた渡邉晋監督。果たして、今季のレノファはどう変わるのか?
「維新」の名を冠するスタジアムとチーム名を体現するかのごとく、サッカーという競技の常識を勘違いしてしまいそうなほどにゴールが生まれるのがレノファ山口の試合だった。2015シーズンのJ3リーグを96得点(1試合平均2.67点)という圧倒的な攻撃力で制したクラブは一躍、全国にその名を轟かせることになった。
あれから5年、舞台はJ2という一段高いステージに移り、一定の存在感を示しつつも厳しい現実に突き当たっている。昨季はついに最下位を経験。コロナ禍による特例措置から降格は免れたが、その分、今季は4チームが降格する。正念場である。
受け継がれる系譜。上野、霜田、そして渡邉
大きな期待を寄せられた霜田正浩体制は3年で終焉を迎えた。初年度こそ8位と躍進し注目を浴びたが、地方クラブの常として年を追うごとに戦力は低下し、2020シーズンはJ2昇格以降の最少得点、最多失点を記録した(失点の推移は誤差の範囲ではあるが……)。
歴代の主力選手は次々と羽ばたいて行き、監督も去った。では後に残るものは何もなかったのかというと、そうでもない。クラブとしての歴史、系譜、思想のようなものはアマチュア時代の9年と、J参入以降の6年で積み上がり、形となった。
1つの成果として「レノファの流儀」を公表。なぜこのタイミングで公開なのか、目次のみが公開されるというなかなか中途半端な公開具合など疑問もあるが、クラブがビジョンと哲学を持っていることをアピール。これは霜田体制下で作成されたものだろうが、それ以前から連綿と受け継がれてきた要素も含まれていることがうかがえる。
レノファは地方の小クラブである。あらゆるリソースが足りない中、場当たり的に見えることも少なからずあったが、思い返してみると根幹の大事なところではかなりベターな選択をしてきた感がある。全国リーグへの昇格以降、ある意味では多くのことを監督へ一任してきたわけだが、その方向性を間違えなかった。命運を託されてきたのは、上野展裕、霜田正治、そして今季から指揮を執る渡邉晋。……
Profile
ジェイ
1980年生まれ、山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』浦和担当に。footballistaには2018年6月より不定期寄稿。心のクラブはレノファ山口、リーズ・ユナイテッド、アイルランド代表。