2021年1月、Jリーグの移籍市場で大きな注目を集めたのが、U-20ブラジル代表FWリンコンのヴィッセル神戸加入だ。王国ブラジルのアンダー代表歴を持つ20歳の若武者は、いったいどんな選手なのか。ベールに包まれた選手としての特徴をはじめこれまでのキャリアや移籍に至る経緯について、現地ブラジル在住の沢田啓明さんが紹介する。
CFとしてはさほど大柄ではないが、屈強にして敏捷で、柔らかいテクニックを持つ。スペースへ走り込んでドリブルで抜け出したり、あるいはタイミング良くゴール前へ飛び込んで、強烈なシュートを決める。クロスの落下地点の予測が的確で、空中戦にも強い。キープ力もあり、的確な状況判断から精度の高いスルーパスを繰り出してチャンスを演出する。
ピッチ中央もしくはゴール前でプレーすることを好み、サイドへ流れることは少ない。そのせいもあって、厳しいマークを受けると持ち味を出せないことがある。また、試合によって、あるいは時間帯によって集中力が欠けることがあり、トラップやパスをミスしたり、明らかな決定機を外すことがある。
16歳11カ月でプロデビュー
ブラジル南部エスピリト・サント州で生まれ、14歳でリオの名門フラメンゴのU-15に加わった。FWビニシウス・ジュニオール(現レアル・マドリー/ブラジル代表)と同い年で、レイニエル(レアル・マドリー所属/昨年8月からドルトムントへ期限付き移籍中。ブラジルU-23代表)より1歳年上だ。……
Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。